2012 Fiscal Year Research-status Report
第二言語の文法習得における身体化認知経験の有効性に関する基礎研究
Project/Area Number |
24520680
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
濱本 秀樹 近畿大学, 文芸学部, 教授 (70258127)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 身体化された認知経験 / 心の理論 / 仮説形成推論 / 帰納推論 / ジェスチャー / 認知意味論 / 社会文化理論 / テンス・アスペクト |
Research Abstract |
本研究の主目的は、第二言語習得(特に文法ルールや意味論的使用条件の習得)においての身体化認知経験(つまりジェスチャー、認知図式や実物提示、あるいは動画、スライド表示など)の持つ機能や役割の明確化にある。本年度は次の4つのパイロット的基礎実験を行い、暫定的ではあるがその成果を全国英語教育学会(名古屋)、ALAA(オーストラリア応用言語学会、パース)で発表し、その分野の研究者と意見を広く交換し、次年度の研究の改善につながるよう努めた。4つの実験は次の通り: (1) 英語多義語standの様々な意義を認知的スキーマの組み合わせによりジェスチャー化しそれを通じて学習することの有効性とその限界についての基礎実験。 (2)可算、不可算名詞の意味論を、実物と認知図式の提示による身体化経験を通じ学習することの有効性についての基礎実験。 (3)英語アスペクトで学習が難しい現在完了進行形の意味を動画提示による認知経験で学習することの有効性についての基礎研究。 (4)形容詞の同義性、highとtallの意味素性を解析し、それを形式的に説明する場合と認知的身体的ジェスチャーに還元して学習する場合の有効性の比較研究。 また上記のパイロット実験に関し、アメリカ応用言語学会でも広く研究者の意見を聞き、次年度の本実験の改善点を明確にした。改善すべき点はpretest、posttestのより厳密な統計処理、learnabilityおよびteachabilityの観点からの現場での実施可能性の検討である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第二言語習得に関する認知科学分野全般と身体化認知の基礎研究は順調に推移している。多くの文献から最新の理論と研究動向を吸収し研究に取り入れている。また上記に関するパイロット的実験を4つ実施し、さらに部分的ではあるがその成果を研究発表により公表することができた。中学校(東大阪市立孔舎衙中学校)での参与観察、また英語科教員との意見交換により研究成果の実際の授業適用可能性についても示唆を得た。しかし実験はすべて勤務先大学でのものであり、小、中、高校でのさらなる観察実施と言語実験が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、第二言語習得における身体化認知の有用性について最新研究の理解と整理を進める。また昨年度のパイロット実験を改良した本実験を計画的に実施する。これには各レベルの教育現場の協力を得る必要がある。また教育現場での授業を実施し教員や学習者から意見を聴取する。国内の小、中、高校での英語授業を参観し、そこでの問題点などの意見を聴取する。上記のプロセスにより得られた知見を国内外の学会で発表し、自分の理論の有効性を確認し、さらに思い違いや歪みを矯正し、それを論文としてまとめ公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未執行経費は平成25年度出版予定の最新研究書籍の購入に充当する予定である。それを含め次年度においては実験に必要な備品の拡充につとめる。また国内外の学会において研究発表を行い、国内の各種学校現場を訪問し授業観察するために必要な旅費を使用する。
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