2012 Fiscal Year Research-status Report
小学校「外国語活動」への英語初期リテラシー指導導入可能性の考察
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24520703
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
池田 周 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (50305497)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 外国語活動 / 初期リテラシー |
Research Abstract |
本研究は、小学校5・6年における「外国語活動」への初期英語リテラシー(文字、および基礎的な「読み・書き」技能)指導導入の可能性を模索し、その具体的な指導プログラムを提案するとともに、その効果を検証することを目的とする。 平成24年度は、まず本研究のフィールド理解として、1.「外国語活動」において、実際に英語の初期リテラシーがどの程度、またどのように取り入れられているかについて授業観察を通して実地調査するとともに、2.「外国語活動」に初期リテラシー活動や指導を導入することに対して、実際の指導者としての小学校教員がどのような意識(信念、態度)をもっているかについて明らかにするためのアンケート調査を実施した。 特に2については、「外国語活動」の導入前後の小学校教員の意識比較も考察の観点に入っているため、まず (1)「外国語活動」導入の前年度に実施したアンケート結果を本研究の目的に沿って再分析し、論文にまとめて公表するとともに、(2)平成24年度(「外国語活動」導入2年目)の再調査に向けてアンケート項目の修正・追加を行った。 (1)の結果から、文字の導入については約7割の教員が肯定的であったが、初期リテラシーの導入では3割程度であった。また肯定的態度を示した教員の多くは、実際の英語教育指導実践を通して、「文字を頼りに英語を学んでいる児童がいる」、「児童は英語の読み技能を学習できる能力がある」といった文字の重要性や、児童の文字習得に対するレディネスに気付いていることが推察された。一方、文字や初期読み技能の導入に否定的な見解の理由には、「小学校段階で英語嫌いを生んではならない」という懸念から生じたものが多かった。さらに小学校での英語教育経験を積み、研修を通して児童の英語習得過程に関する知識を身に付けることにより、文字や初期読み技能に関する教員の信念は変化し得ることが推察できたことは意義深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度である平成24年度は、主として、小学校「外国語活動」への英語初期リテラシー指導導入に関して、実際の指導現場においてこの技能がどの程度扱われているか、および導入に対する小学校教員の意識を含めてフィールド理解を行うことを目的とした。さらに、平成25年度以降に行う言語習得および日英語の比較の観点から見た早期英語教育への初期リテラシー導入の重要性考察に向けて、教科として学校教育に英語が導入される中学校の教員対象に、小学校段階での英語リテラシー導入についての意識調査も計画していた。 小学校教員に対する意識調査は、「英語教育の研究指定を受けたことがある小学校」と「受けたことのない小学校」という2つの母集団に対し、それぞれ500校ずつランダムにサンプルを抽出して郵送によるアンケートによって行った。内容も「文字をどのような活動の中で、または何の目的のために、どのように用いているか」に関して、客観的に測定するスケール法の質問項目、および自由記述によって「小学校段階での英語文字や初期リテラシー指導に対する考え」を答える項目とするなど充実させることができた。ただ実施時期について、平成23年度に「外国語活動」が導入された時に5年生であった児童が一通り6年生までの学習内容を終える時期(平成25年1月下旬)が最適であると判断したため、年度中に分析まで終える当初の予定より若干遅れ、年度末までにデータ入力が完了した段階である。 中学校教員を対象とした意識調査についても、平成23年度に本格導入された「外国語活動」を、5・6年の2年間通して経験した中学1年生の英語授業担当者を対象とすることが研究目的に沿うと考え、実施を平成25年度1学期末まで遅らせることとした。しかし、小学校、中学校教員対象いずれの調査も、平成25年度中に学会や論文を通して結果の公表を行うことについては研究計画通り実施できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進においては、まず平成24年度末に実施した小学校教員対象の「外国語活動における英語リテラシー導入」に関する意識調査の分析と、「外国語活動」導入前年度の調査結果との比較考察を行う。同時に、中学校教員対象の意識調査を実施、データ入力を行い、「外国語活動」導入前後の小学校教員の意識の変化と照らし合わせながら考察を行う。さらに、愛知県内の教員数名を対象に、対面によるインタビューも行う。内容はアンケート項目に即したものだが、量的手法では明らかにできない、教員の率直かつ詳細な考えを引き出すことによりアンケート結果を補完する。結果は早急に公表し、現場の教員からのフィードバックを得たい。 次に、「外国語活動」に英語の文字や初期リテラシー技能の指導を取り入れることの意義、および「どの程度まで」「どのように」取り入れるべきかについての理論的考察を文献研究により行う。考察の観点として、1.学習者(小学校5・6年生)の認知的発達段階、2.英語と日本語の文字・音韻体系の相違、および3.中学校英語教育との連携、という3つを設定する。この考察は、「小学校英語教育に英語の文字や初期リテラシー技能教育を導入できるのではないか」という仮説を裏付け、本研究の理論的基盤となる。 さらに年度後半からは、小学校英語教育向けの既存の語彙リストなどの分析を通して、外国語活動カリキュラムに「文字・初期リテラシー」指導をどう組み込むべきかについても検討を始める。そのために、英語母語話者や英語学習者に対する文字や初期リテラシー技能の指導法やその成果に関する文献研究、また英語母語国・EFL国の初等教育における英語リテラシー指導用教材の収集・考察や実際の授業観察を行い、既成の指導法やカリキュラムの日本の小学校への応用可能性を探る。 「外国語活動」の授業観察は研究年度全体を通して継続し、適宜授業担当教員のインタビューも行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度末の段階で「次年度使用額」が生じたのは、主として以下の状況のためである。1.「外国語活動における英語初期リテラシー導入」に関する小学校教員対象の意識調査実施を当初予定より遅らせ、「外国語活動」導入から2年が経過する時期、すなわち5年生および6年生の授業が初めて一通り終了する段階の平成24年1月から2月にかけて実施することにした。そのため、データ入力・分析に関わる研究費の使用が平成25年度にずれ込んだ。また、2.中学校教員の「小学校段階での英語初期リテラシー導入」に関する意識調査を、小学校で「外国語活動」を導入後2年間通して経験してきた新1年生担当の教員対象に行うべきと判断し、平成25年度1学期末(6月から7月予定)とした。これについても1と同様に、アンケート実施経費、およびデータ入力・分析に関わる研究費の使用が次年度となる。平成25年度分として請求した助成金は主に、「小学校に英語初期リテラシーを導入する意義」を明らかにするための文献研究および現地調査に関わる目的のために使用するが、平成24年度からずれ込んだ2つの意識調査の成果公表のためにも用いる。
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