2013 Fiscal Year Research-status Report
帝政期ドイツにおけるトランスナショナルな人的移動とジェンダー秩序に関する研究
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24520729
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
日暮 美奈子 専修大学, 文学部, 教授 (30384671)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅田 進史 駒澤大学, 経済学部, 准教授 (30447312)
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Keywords | トランスナショナル史 / ジェンダー史 / ドイツ史 / 移動 / グローバリゼーション / 帝政期ドイツ / 近代史 |
Research Abstract |
今年度も以下の3点においておおむね当初の計画通りに研究を進めることができた。 1.プロジェクト・メンバーによる研究会を専修大学神田校舎にて3回実施した。第1回(6月8日)は、在外調査出発にさきだつ大井(研究協力者)の研究構想を発表に加えて、浅田(研究分担者)によるトランスナショナル史研究の最近の動向、とくに分析概念としての“Policing Empire”の論点整理をもとに、全員でプロジェクト全体の枠組みと方向性を議論した。第2回(1月25日)は、全員で個別研究テーマと進捗状況を確認したうえで、今後の議論の共有化・深化に有効な方法を検討した。その結果、当初予定していた成果報告書の刊行に替えて、翌年度にドイツからの研究者を囲むワークショップを実施することが提案された。第3回(3月15日)では、ワークショップ開催の準備と方法を具体的に検討した。ワークショップでは個別テーマの分析にもとづく全体テーマ(越境を管理・監視する権力のベクトルと性格)を論じ、その成果をのちに学術雑誌に発表することとした。 2.8月から9月にかけて2名のメンバーが海外調査を実施した。大井は、ドイツ連邦軍事文書館で関連史料を収集し、帝政期ドイツ、オーストリア両海軍による在外ドイツ系居住民の「保護」と監視のあり方を考察した。松本(連携研究者)は、ロシアほか5か国にて戦争記念碑、博物館の調査を実施し、対外戦争というトランスナショナルな契機の表象を分析した。両者はそれぞれ成果を得た。 3.浅田を中心に本研究テーマに関連する方法論の検討や研究動向の整理を行うとともに、ウェブサイトで活動内容とその成果を発信した。 これらの活動を通じて、各メンバーによる個別研究の進展と同時に、最終年度に向けて研究プロジェクト全体の総括に具体的な道筋をつけることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書どおり、今年度は次のように研究プロジェクトを展開した:1.メーリングリストを活用したメンバー間の意見・情報交換および研究の推進、2.メンバー全員による年3回の研究会開催、3.メンバー2名の海外渡航による史料収集・現地調査、4.ウェブサイト上での研究プロジェクトの活動・成果の公表。 このうち4.については、ウェブサイト更新の回数が少なかったこともあり、今年度の研究成果を十分に公表できなかった点は否めない。しかしその反面、3.では、ドイツ国内・国外の人的移動を管理・監視する権力のあり方とジェンダー規範の絡み合いを具体的に考察するために、植民地行政文書・海軍軍指令部文書、戦争記念碑ないしは博物館など、現在ドイツでない地域に関する、ないしはその地に現存する文書史料および記念建造物の分析がきわめて有用であることを確認できた。加えて1.および2.では、メンバーが本研究全体における個別研究テーマの位置付けを確認する機会を設けたため、最終年度に向けて全員で論点を共有することが可能となった。 また、これまでセバスチャン・コンラート教授(ベルリン自由大学)、Youjae Lee(李有戴)准教授(テュービンゲン大学)など、研究関心を共有する国外研究者との研究交流に向けた準備を進めてきた。その成果の確認とプロジェクト全体の総括を行うために、最終年度にこれらの国外研究者のうち1名を招聘することをめざすワークショップの開催を決定した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本研究プロジェクト最終年度にあたる。上述したように、研究遂行にともない最終年度に予定していた成果報告書刊行をワークショップ実施に振り替えるなど、当初の計画に変更が生じたため、以下の手段でプロジェクトを遂行し、研究成果の総括と公表に向けて準備を行う。 1.ひき続きメーリングリストを活用してメンバー間の意見・情報を交換し、個別研究およびプロジェクト全体の推進を図る。緊密な連携により、個別具体的研究と全体テーマとの相互関連性をより明確にすることをめざす。 2.メンバー全員による会合を3回開いて個別研究テーマとその進捗状況を確認し、ワークショップでの論点を整理する。研究遂行上、フォローアップ調査の必要なメンバーがいる場合には、現地調査を行う(1名)。 3.ワークショップを2月ないし3月に実施するため、研究関心を共有する国外研究者として招聘予定のコンラート教授と連絡を取りつつ、開催準備を進める。ワークショップは、(1) メンバーの個別研究報告をふまえた討論を行うクローズド・セッションと、(2) 西洋近現代史研究会などとの連携による、招聘研究者の研究報告および討論を行う公開セッション の2部制とする。 4.研究プロジェクトの活動・成果の公表に向けて準備する。ウェブサイト上での情報発信に加えて、メンバーは研究成果を個別に学術雑誌に投稿するほか、上記ワークショップ後にプロジェクト全体での成果を『専修史学』に掲載するための準備にかかる。
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Research Products
(11 results)