2012 Fiscal Year Research-status Report
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24520733
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
井上 勝生 北海道大学, -, 名誉教授 (90044726)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日清戦争 / 甲午農民戦争 / 東学農民戦争 / 日本近代史 / 朝鮮近代史 |
Research Abstract |
史料調査によって、以下のような成果をあげることができた。 1)松山市(会場、愛媛大学)で、日本の地域史研究者と韓国の東学農民戦争研究者たちと市民も参加した国際フォーラムに招待講演者として参加、日本と韓国で史料と史跡を探索・調査してきた成果を講演「東学農民軍を包囲・殲滅した日本軍の史料を探索して」で報告し、日韓の研究者や関係者と討論することができた。愛媛県現地フィールドワークにも参加した。東学農民軍殲滅作戦に参加した兵士の家の子孫を、愛媛県ではじめて三軒、具体的に見出し、お宅を訪問し、兵士の事跡を聞き取り調査し、部隊名や戦死地などを記した墓を見出すなど、社会史的な研究として、画期的な成果をあげた。 2)東学農民軍殲滅作戦を指揮したのは、大本営と仁川兵站監部であるが、防衛省防衛研究所図書館、千代田史料(旧宮内庁史料)をカードファイルで調査して、日清戦争直前に印刷され、60数枚を貼り合わせた巨大な「朝鮮全図」を見出した。大本営で作戦指揮に使われた地図の一つと推測され、当時の作戦を復元する基礎資料である。また、同じ千代田史料で、殲滅後備兵部隊の名簿史料を見出すことができた。これも基礎資料である。 3)この研究テーマの研究書を執筆する仕事を進めることができた。今の段階で史料を分析、整理し、一冊は共著で6月に、一冊は、単著で8月に刊行予定である。本テーマの研究を整理し、深める作業を進めることができた。研究書で、啓蒙書も兼ねているので、社会の関心を得ることもでき、史料探索なども、いっそう進むと予想される。 4)東学農民軍に兵士が動員された四国四県のうち、香川県と高知県について、市町村史などの日清戦争史に当たる部分の悉皆調査を進めた。高知県は、途中であり、香川県は市町村史については終了し、さらに得られたデータからの調査をすすめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1)松山市での国際シンポジウムに招待講演者として参加した。松山市は、東学農民軍討伐日本軍後備部隊、二つの大隊が編成された市である。日本コリア協会愛媛と東北アジア歴史財団の後援によるシンポジウム「日清戦争期の朝鮮の東学農民革命と愛媛」で、報告「東学農民軍を包囲殲滅した日本軍の史料を探索して」を講演。地元研究者との共同フィールドワークでは、兵士の子孫たち、史跡、墓石などが初めて見出され、日韓共同で兵士子孫を訪問し、兵士の事跡、人物などを聞き取り調査するという社会史研究には前例のない成果をあげることができた。 2)これまで収集した資料を調査、整理、分析し、本研究テーマで二冊の研究書を執筆する作業を進めることができた。研究書は、一冊は共著で6月刊行、一冊は単著で8月刊行予定である。朝鮮東学農民軍殲滅作戦の成立、展開、日本軍兵士の社会史、朝鮮東学農民の戦闘状況、殲滅の経過などを本格的に検証、叙述することができた。 3)防衛研究所図書館で、旧宮内庁の千代田史料を調査した。千代田史料はアジア歴史史料センターで公開されていない史料である。日清戦争時、大本営が使用した可能性の高い、陸軍測量部作成の巨大な二枚の「朝鮮全図」20万分の1地図、および兵士名簿史料を見出すことができた。 4)日本軍の兵士個人の「陣中日誌」を、高知県と徳島県で見出していたが、戦争の加害に関わる微妙な問題をはらむ史料である。この史料の保存と公開について、地元へ出かけて関係者と話し合い、保存へと理解を深めることができた。保存・公開への重要な一段階を進めることができた。 5)四国の地域史史料の調査、収集も、市町村史など地域史史料の悉皆調査を進め、香川県と高知県で作業を進め、香川県分は、市町村史データの収集を終えることができた。調査を深める準備が大きく進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
1.香川県と徳島県、愛媛県、高知県の地域の日清戦争関連資料の探索を、引き続き、県立図書館、県立文書館を中心に進め、兵士資料と史跡の所在を探索し、見出すことができた段階で、現地の調査を実施する。香川県、高知県、徳島県は、地域資料の所在調査を行い、愛媛県は、国際シンポジウムの開催と現地フィールドワークで、これまで未知だった後備兵関係の資料をみることができたので、これら四県の調査を、文献、史跡ともに探索する。 2.東学農民軍討伐作戦に参加したことが分かっていて、これまで着手されていない広島県の後備第10聯隊関係資料と、富山県、福井県、岐阜県、愛知県、三重県の後備第6聯隊関係資料の調査を、まず、俯瞰的に、都立中央図書館(地方史関係文献が収集されており、閲覧も効率よくできる)や国会図書館(文献は揃っているが閲覧は、効率的でない)で調査し、文献の所在が把握そうな地域から調査を実施する。 3.東学農民軍討伐作戦を、日清戦争全体の展開のなかへ位置づける検証が必要である。具体的には、政府、軍指導者の資料の調査が必要である。これを都立中央図書館、国会図書館、福島県立図書館などで進める。 4.山口県と広島県の後備兵関係資料の探索を、東京と両県の県立図書館、県立文書館、および地域の現地で行う。 5.韓国の東学)農民戦争研究者と共同した韓国現地調査を予定している。韓国側の準備状況(該当する研究者が大学の副学長に就任などによる、スケジュール調整)があるので、韓国側の準備がすすめば、韓国での東学農民戦争現地調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.四国四県、愛媛県、香川県、徳島県、高知県の県立図書館、県立文書館などで資料調査をするための出張旅費が必要である。また、山口県、広島県の県立図書館、県立文書館での資料調査の出張旅費が必要である。つぎに、富山県、福井県、岐阜県、三重県、愛知県のなかで、国会図書館や都立中央図書館での俯瞰的な調査によって所在情報が得られた県への出張旅費が必要になる。そして、俯瞰的な調査を行うために、都立中央図書館、国会図書館への東京都への出張旅費が必要である。とくに 2.防衛省防衛研究所図書館での、アジア歴史資料センターで公開されていない資料の資料調査が必要である。このために東京都への出張旅費が必要である。 3.討伐作戦に参加した兵士個人の「陣中日誌」をはじめて高知県宿毛市と徳島県阿波郡の個人宅で見出した。保存、公表できるよう準備を進めている。借用できない個人資料であるので、とりあえず写真複写が必要だが、条件のよくない場所で行わねばならず、昨年は、良好な写真は撮影できなかった。良好な撮影をするために、デジタルカメラ機材を購入する予定である。また、資料調査現場で調査、撮影情報を保存するために、現場へ持ってゆけるパソコンを購入する予定である。 4.韓国側の準備が進んでいるので、準備ができれば、韓国現地での現地調査と資料収集をする。韓国への出張旅費が必要である。 5.日本近代史の資料集、研究図書を購入する予定である。研究論文執筆のために必要な文房具、収集した資料を、保存し、整理するファイリング用品などを購入する。
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Research Products
(4 results)