2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520738
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
厚谷 和雄 東京大学, 史料編さん所, 准教授 (80143535)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末柄 豊 東京大学, 史料編さん所, 准教授 (70251478)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日本史 / 中世史 / 聖教 / 印信 / 血脈 / 密教 / 萩原寺 / 四国 |
Research Abstract |
真言密教の附法に際して、師資の間に弟子の修得を証明する目的で発給される文書に印信がある。この師匠より弟子への伝法に際して集積された、密教修学の精髄・成果が聖教である。潅頂に際しては、印信の外に口決や聖教とその目録などが添えられる場合がある。小野・広沢の野沢十二流を根本として、中世以降三十六流あるいは七十余流の諸法流に分化した東密に於いては、その法流ごとに印信や修学を要する聖教に差異が設けられることとなった。本研究は、中世地方寺院に伝来した聖教類として質・量ともに優れた中世聖教群と評価できる萩原寺(香川県観音寺市)所蔵地蔵院聖教を素材として、その本来あるべき所伝の姿への復元のための中世地方寺院所蔵聖教に関する史料学を新たに構築しようとするものである 。本年度における研究の概要は、以下の通りである。 ①萩原寺への出張調査・撮影:本年度は年2回の調査を実施し、所蔵聖教の再整理作業と真恵授受に関わる印信類の原本調査及び室町時代前期聖教のデジタル撮影を行った。 ②調書データの入力・校正:既存調書及び再整理作業に伴う補充調査の成果に基づき寸法・紙質及び南北朝時代成立に関わる印信類の本文等の入力を行い、これを作成済みデータベースに反映した。 ③目録原稿の作成:①の撮影、②のデータ入力の進捗に併せて室町時代前期聖教の目録原稿を作成した。 ④中世萩原寺聖教の史料学的研究:調書データの中から萩原寺中興開山真恵がその授受に関わった印信類を抽出し、精細な原本調査を行い、これを印信データベースに反映させるとともに東密の近世前期における印信類集成の成果である「三十六流大事」(続真言宗全書第二十五所収)所載印信類のデータベースへの入力を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度における研究の達成状況は、以下の通りである。 ①萩原寺への出張調査・撮影:本年度は各6日間ずつ年2回の調査を実施し、真恵が授受に関わった印信類について精細な原本調査を実施するとともに、撮影の前提作業として室町時代後期の聖教類について年代比定の確認・調書の採取漏れ等の再点検を行うとともに室町時代前期聖教のデジタル撮影を行いその過半の撮影を完了した。 ②調書データの入力・校正:既存調書及び再整理作業に伴う補充調査の成果に基づき寸法・紙質等の入力を行うとともに、真恵が授受に関わった印信類についての原本調査の結果をデータベースに反映させ、これを先行科研および本研究によって撮影したデジタル画像による確認作業を行った。 ③目録原稿の作成:聖教類のデジタル撮影と調書データ入力の進捗に併せて室町時代前期聖教の目録原稿を作成した。 ④中世萩原寺聖教の史料学的研究:調書データの中から真恵がその授受に関わった印信類を抽出し、原本調査の成果とデジタル画像との照合によって、内容・形態(法量・料紙・筆蹟など)を仔細に比較検討し、これを印信データベースに反映させるとともに既刊流布の印信集「三十六流大事」所載印信類の全文入力を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度も萩原寺への出張調査を実施し、印信類の精細な原本調査と聖教類の再整理作業を行い、これら作業の進捗に併せて目録原稿の作成・原本校正を進めるとともに、室町時代中期までの聖教の撮影を行う。26年度は、萩原寺への出張調査を実施するとともに、寺外に流出した萩原寺旧蔵聖教の調査も行いたい。また、前年度に引き続き原本調査と聖教類の再整理作業を行い、作業の進捗に併せて目録原稿の作成・原本校正を進め、室町時代後期までの聖教の撮影を行う。 ①萩原寺への出張調査・撮影:平成25年度は各6日間年2回、26年度は6日間1回の調査を実施し、江戸時代前期までの聖教類について年代比定の確認・調書の採取漏れ等の再点検作業を終了する。撮影については、26年度中に室町後期聖教の撮影を完了する。 ②調書データの入力・校正:25・26の両年度とも、既存調書及び再整理作業に伴う補充調査の成果に基づき寸法・紙質等の入力を行うとともに、印信類の原本調査結果をデータベースに反映させ、撮影画像による確認・校正作業を行う。 ③目録原稿の作成:①②の進捗に併せて25年度中に室町前・中期聖教の目録原稿を作成し、26年度の末には室町時代後期までの目録原稿を完成させる。 ④中世萩原寺聖教の史料学的研究:25・26の両年度とも、調書データから真恵に関わる印信類を抽出し、原本調査の成果と撮影画像との照合によって、内容・形態等を比較検討し、これを印信データベースに反映させるとともに既刊流布の印信集の全文入力を行い、印信データベースを構築する。以上の成果をもとに26年度の末には、研究成果報告書を刊行する。そこに盛られる主要な研究成果は、萩原寺地蔵院聖教の復元と、それにもとづく地方寺院に所在する中世聖教に関する史料学の構築に資する論考・史料の翻刻、そして萩原寺地蔵院聖教目録(鎌倉~室町)となる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の柱の一つで、その研究成果の中心となるものは萩原寺地蔵院聖教目録(鎌倉~室町)の公刊である。目録原稿は聖教類のデジタル撮影と調書データ入力の進捗に併せて作成しているが、デジタル撮影のペースを上げることで、目録原稿の作成を始めとして、本研究の促進が計られるものと思考される。萩原寺への出張調査・撮影は、平成24年度は各6日間ずつ年2回、1回あたり6人ないし7人(原本調査班・撮影班各3人+史料修補担当者1人)で5泊6日の出張を実施したが、平成25年度に2回行う予定の萩原寺への出張調査・撮影に際しては、2回のうち少なくとも1回は撮影機材を増強して2台のデジタルカメラを稼働させて、デジタル撮影の進捗を計りたい。従って、このための調査・撮影人員の増員が必要であり、そのための旅費(撮影班各3人+史料修補担当者1人)等に充当することを計画している。また、デジタル撮影の進捗により、当初計画より進んで、室町時代後期から安土桃山時代以降に及ぶ聖教のデジタル撮影の可能性が考えられる。
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