2013 Fiscal Year Research-status Report
古代・中世における「乗り物文化」の学際的研究-『新・輿車図考』の構築を目指して-
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24520764
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
京樂 真帆子 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (00282260)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千本 英史 奈良女子大学, その他部局等, 教授 (50188489)
岩間 香 摂南大学, 外国語学部, 教授 (50258084)
今 正秀 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (70294270)
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Keywords | 牛車 / 輿 / 平安京 / 都市文化 |
Research Abstract |
本研究は、古代・中世のミヤコにおける乗り物文化の実態を解明し、都市の文化構造を明らかにすることを目的とする、文献史学・日本文学・美術史学・考古学による学際的共同研究である。本年度のテーマは、『新・輿車図考』構築のための作業であった。各自が担当分野の史資料分析を行い、データの蓄積を行った。 本年度は3回の研究会を持った。初回研究会(2013年5月4日)では、「古代・中世における「乗り物文化」:考古資料編」として、平安京およびその近郊地域で出土した「牛車関係資料」の整理・分析が紹介された。さらに、「『輿車図考』収載の引用文献の検証(中世分)」では、中世担当者の成果が披露された。 第2回研究会(2013年7月20日)では、奈良教育大学図書館所蔵の絵画資料「執金剛神縁起」の見学を行った。一つの資料を多分野の研究者が分析することで新たな発見があり、学際的研究ならではの活発な議論が展開した。 第3回研究会(2013年12月21日)は、当初、東京からのゲストスピーカーを迎えての研究報告会の予定であったが、報告者の都合で急遽変更となり、研究分担者による絵画資料の分析方法解説と、代表者による東南アジアの乗り物文化の資料紹介が行われ、本共同研究構成員の幅広い知識、関心が発揮された。 さらに、本年度は、史料整理担当者を雇用し、本科研メンバーでは手薄の室町時代の乗り物文化についての史料整理を行った。具体的には、足利義満が生涯で乗った乗り物のデータベースを作成した。また、前年度からの継続作業として、『輿車図考』の写本分析も進めた。その中で、従来はそれと知られていなかった写本を発見することが出来、成果の公開を準備している。 こうした作業を次年度も継続するが、研究会で顔を合わせることでお互いの作業の進行状況を確認し、知識の共有や助言を得ることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「『新・輿車図考』構築のための作業」を統一テーマとし、各自で作業を行った。 文献史料データ蒐集担当は、前年度に確定した分類カテゴリーに基づいて、古代・中世の史料を博捜し、データベースの構築を目指した。今年度は、特に、中世前期の史料収集を行った。なお、前年度に引き続き『輿車図考』の諸写本分析についても継続している。 日本文学データ蒐集担当は、同じくカテゴリーに基づいて中古文学作品から「乗り物文化」に関わるデータを集積した。今年度は、『源氏物語』の整理を行い、その成果を次年度(平成26年度)最初の研究会にて報告する予定である。 絵画資料データ蒐集担当は、同じくカテゴリーに基づいて絵画資料から「乗り物文化」に関わるデータを集積していく。今年度は、「執金剛神縁起」の分析を行った。 また、乗り物文化に関する考古学データ集積も継続し、平安京およびその近郊からさらに畿内にまで整理を進めている。 これらの作業は次年度も継続するため、全体のどこまでが完了しているのかを判断することが難しい。文献史料データ蒐集担当は、古代の史料分析も進めて行く必要があり、次年度(平成26年度)の課題である。日本文学データ蒐集担当は、『源氏物語』以外の文学作品の分析、絵画資料データ蒐集担当はより広い絵画資料の分析に期待される。これらを継続課題とし引き続き作業を進めることで、成果を上げていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、研究第2段階の『新・輿車図考』構築のための作業の2年目である。「乗り物文化」のデータを蒐集する際には、より原本に近い史料(善本)を使って、『輿車図考』の書き換えを行うことが重要である。データベースの構築作業は、煩瑣かつ膨大であるため、この作業は学生・大学院生などの研究協力者と共に行う。データベースはインターネットを通じて公開することを予定している。前年度から引き続き作業を行い、データベースの完成を目指す。 文献史料データ蒐集担当は、前年度に引き続き古代・中世の史料を博捜し、データベースを構築する。日本文学データ蒐集担当は、中古文学作品などから「乗り物文化」に関わるデータをさらに集積していく。絵画資料データ蒐集担当は、絵画資料から「乗り物文化」に関わるデータを集積していく。その際、「乗り物文化」に関わる「絵引き」作成を試みたい。そして、このデータベースを活用した研究論文作成に向けての準備を開始する。 さらに、本年度からは「牛・牛飼童関連史料調査担当」を設置したい。そして、「乗り物文化」研究のさらなる展開を模索するために、牛と牛飼童に注目した調査を行うこととする。具体的には、『駿牛絵詞』などの説話文学、絵画資料の基礎データを整理し、研究の可能性を探る。この史料群についてはまだ本格的な調査がなされておらず、まずはパイロット調査から始めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
文献史料蒐集担当班は、研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込額と執行額は異なった。 基本的に、当初予定通りの計画で進めていく。年3回程度の研究会の開催を共同作業とし、通常作業は各自で史料収集・分析・検討をおこなっていく。今年度も、データ処理作業の増加が見込まれ、人件費の手当てをしていくことになる。また、史料閲覧を共同で行うための旅費も必要となる。さらに、再びゲストスピーカーを招くための旅費と謝金も必要である。 なお、文献史料蒐集担当班は、研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、本年度の研究費も含め当初予定通りの計画で進めていく。
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Research Products
(12 results)