2014 Fiscal Year Research-status Report
村役場文書による地域社会と兵事・戦時動員に関する社会史的研究
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24520765
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
小林 啓治 京都府立大学, 文学部, 教授 (60221975)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 兵事 / 役場文書 / 軍事援護 / 戦時動員 / 戦時体制 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.木津村役場文書の中の兵事関係文書について、兵事システムを解明する上で重要な史料を選択し、件名目録を作った。重要なものについては翻刻を行った。1944年前半までの史料についてはほぼ終了した。 2.木津村役場文書の兵事以外の戦時体制構築に関する史料について調査を行った。対象となった簿冊は、庶務、統計書、事務報告、青年団、銃後奉公会などである。これらの簿冊については、件名目録を作成中である。また木津村役場文書全体について、既存の目録と保存簿冊を対応させて目録の不備を補正した。同時に、解題を付して京丹後市のHPを通じて公開した。 3.防空演習についても、木津村だけではなく京都府庁文書や『京都日出新聞』などについて調査を行った。1930年代半ばの「国防国家」提唱とともに、地域における防空体制を通じての組織化が進むことが解明された。 4.経済更正運動について、木津村役場文書の該当簿冊を調査し件名目録を作った。また、『木津村報』について詳細な記事の見出しデータを作成した。村報については、他の地域の村報と照らし合わせ、木津村の村報の性格を確定することができた。経済更生運動については、近年の「共同体論」の見直しの動向をトレースし、どのように位置づけるべきかについて再検討を行った。 5.新たに徳島県神山町旧村役場文書を調査し、残された兵事史料の内容を確認するとともに、戦時動員体制の地域的な差異についても明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
農村を対象としていることから、当初の予定より異なった要因を考察しなければならなくなった。ことに経済更生運動については、史料もさることながら研究の蓄積が膨大にあるため、それらを踏まえつつ分析していくことに時間を要した。本年度でその作業をほぼ終えたことにより、たんに兵事を通じてのみ総力戦体制への地域の組織化を見ていくのではなく、「共同体」の再建や農業経営の改善の試みと絡み合わせながら、その展開を跡づけるという新たな視点を獲得できたように思われる。 「総力戦体制論」には、地域の自治や「共同体論」にみられる主体形成といった視点が希薄であり、逆に、「共同体論」には、地域の主体形成が総力戦体制とどのように関連しているか、という視点が軽視される傾向がある。その意味で、この間の研究で両者を接合させて理解する論点を得られたことは重要である。 さらに、防空についても調査・研究を進めたことによって、「国防国家」建設が地域で具体的にどのような様相を示していたかを解明することが可能となった。防空については、木津村以外の文書も調査し、防空監視哨への地域の動員についても具体的に解明する手がかりをえた。 この間、京都府内の役場文書について、新たな情報が得られ、調査を行ったことも重要な成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は次の4点に沿って進める。 第1に、木津村役場文書の兵事簿冊について、引き続き件名目録を作っていくことである。1944年後半以降のものが対象となる。同時並行で重要な史料をピックアップし、翻刻を進めて行く。 第2に、木津村以外の京都府内の役場文書を調査し、兵事史料がどの程度残存しているかを確認することである。それによって、木津村の兵事史料の保存状況を客観的に位置づけ、さらに戦時下の兵事行政全体の見取り図を描くことをめざす。 第3に、新潟県上越市、滋賀県長浜市などに保存されている兵事史料についても引き続き調査を進めていく。兵事史料が師管ごとにどれだけ違うのかに注目しつつ、兵事史料の類型化を行うことによって、木津村兵事史料の歴史的意義を考察する。 第4に、徴兵制によって必然化される兵事システムと、農業経営のための「共同体」の再建という双方向から、総力戦体制の構築や地域の戦時体制への動員を跡づけ、研究の総括を行う。その際、1945年8月で研究を終わらせず、その後まで地域に残された戦争の傷跡(戦後の中の戦争)を照射できるような視点を導き出す。
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Causes of Carryover |
時給が年度途中で上がったために、謝金の計算に狂いが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
少額なので、来年度の物品費(メディアの購入)で使用する。
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Research Products
(1 results)