2013 Fiscal Year Research-status Report
東北地方の天保の飢饉を中心とした非常態と飢饉の記憶に関する研究
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24520767
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
菊池 勇夫 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (20186191)
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Keywords | 天保の飢饉 / 非常態 / 餓死 / 米騒動 / 一揆 |
Research Abstract |
東北地方における天保の飢饉を中心とした飢饉・災害史料の収集は大学図書館、東北各県の主要図書館、および購入によって継続的に実施したが、かなり蓄積されてきたので、さらに対象を東北以外にもひろげ、全国の県史・市町村類を開架で閲覧・複写できる東京都立中央図書館において、全国の天保飢饉を主に飢饉・災害史料を収集した。また北海道立文書館・図書館においても、北海道のみならず東北地方に関係する天保飢饉関係史料を収集することができた。これによって本研究のベースとなる天保飢饉関係史料の残存状況の把握に向けて、かなり収集作業が進捗したといえる。 論文としては、本研究の柱ともいうべき飢饉の非常態を明らかにするため、仙台藩の天保飢饉、とくにそのピーク年となった天保7・8年の石巻地方・丸森地方を取り上げて公表した。そこでは全般的な飢饉状態の把握とともに、餓死に追い込まれていく一人ひとりの身の上に即して飢饉のリアリティーを追究してみた。また、天明の飢饉になるが、米騒動発生地として知られる弘前藩青森町の飢饉について、騒動から飢饉へのプロセスを具体的に検証した論考も公表し、天保期の米騒動を研究していくさいにも役立つ考察となった。 さらに、論文として公表するには至らなかったが、天保期の秋田藩における天保4・5年の飢饉状況、および米騒動・一揆についての考察を行い、その成果を詳しいレジュメにまとめ、秋田県の生涯学習の講座で話すことができた。この講座のほかにも、八戸藩の農書『軽邑耕作鈔』を飢饉の備えという観点から取り上げた講演など、いくつかの講義・講演を行った。これらの準備過程が本研究の進展となり、かつ本研究の成果を社会に対して公開する場ともなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を進めていくためには天保の飢饉だけでなく他の飢饉・災害も含めて、東北地方をはじめ全国の関連史料を、撮影あるいは複写によってできるだけ多くの収集することがカギとなるが、この2年間を通じてかなりの分量の史料・文献を蓄積することができた。地方の中小私立大学に勤務しているためにいかに効率的に史料収集ができるか心配であったが、さいわい東京都立中央図書館において全国の自治体史の開架閲覧が可能であり、大いに助かった。 これによって本研究の基盤部分をなす天保飢饉史料の残存状況の把握、災害の年代史的な把握が可能となるような史料が集まってきている。年代記的把握では、すでに作業をある程度終えている八戸藩や仙台藩のほかにも、秋田藩などいくつかの地域について作業に取り掛かっている。本研究は東北地方を中心とするものではあるが、東北地方以外の全国比較も念頭においている。災害の発生傾向、あるいは米相場の全国比較などであるが、そのための史料の目途もある程度立ってきたといえよう。 論文の公表はまだ研究期間内においては作業途中でその一部にとどまらざるをえないが、研究の柱となる人々の日々の暮しに密着した飢饉の非常態については、すでに仙台藩の天保の飢饉についてはその考察結果をまとめ紀要に発表することができた。また、各種講座等の必要に迫られて作成・配布した要旨・資料も本研究に密接に関連するものであり、時間さえあれば論文化していくことが可能となっている。このような進捗状況から、おおむね順調に推移していると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は本研究の最終年度にあたるので、3年間の調査・研究を年度内に報告書のかたちでとりまとめることとする。そのための具体的な作業、プロセスはおよそ以下の通りとなる。 ①翻刻史料が中心となるが、すでに収集した天保の飢饉史料のリストを作成し、東北地方および全国の残存状況を把握する。そのためには必要に応じて図書館・文書館等で補充的な史料収集を行う。収集史料の整理・リスト化の作業は基本的には研究代表者が行うこととしたいが、一部の補助的な作業についてはアルバイトの雇用を考えている。 ②年代記類を使った仙台藩・八戸藩・秋田藩などの地域史的な近世飢饉・災害年表を完成させ、さらに東北以外の西日本の地域も加え、災害・飢饉発生の地方・地域差を明らかにしていく。 ③本研究の柱となっている飢饉下の人々の非常態、飢饉体験の記憶・教訓などに関しては、すでに講演・講義等のためにレジュメを作成し考察が進んでいるものついてはできるだけ論文のかたちにまとめていきたい。全国の相場比較などは関係史料も集まってきたのでぜひ取り組みたいが、時間的なこともあるので①②を優先することになろう。むろん、こうした個別的検討のほかに近世の近世の飢饉・災害についての総論的なまとめにも予定している。 このほか、本研究の成果を社会に還元していくために市民講座等には積極的に応えていくこととしたい。すでに秋田県や仙台市などにおいて講座が予定されている。
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Research Products
(2 results)