2014 Fiscal Year Research-status Report
沖縄現代史およびグローバル化時代の歴史哲学についての研究
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24520785
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Research Institution | St. Thomas University |
Principal Investigator |
森 宣雄 聖トマス大学, 人間文化共生学部, 准教授 (20441157)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日本史 / 近現代史 / グローバル・ヒストリー / 歴史哲学 / 沖縄史 / 女性史 / 民衆史 / オーラル・ヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、第1に沖縄施政権返還後の沖縄現代史について、実証的かつ理論的な検討を進め、そしてそれらを総合する視点から、第2に近現代沖縄の歴史経験の中から生み出されてきた歴史観を、ひとつの歴史哲学として構成し、社会に発信・提起しようとするものである。その歴史観とは、国民国家を単位とした工業化の過程で構想され、世界に普及してきた西欧近代の主体主義的な歴史哲学と対極的な、自然-社会-世界の間の調和と共生をはかろうとする思想として、21世紀の世界およびその世界史認識において重要な意義を持つと考えられる。 研究実施3年目においては、これまでの実証・理論研究で立ててきた沖縄現代史像をより広い文脈に位置付けるべく、民衆史研究の創始者のひとり鹿野政直(早稲田大名誉教授)を囲む座談会を7月20日に開催し、鹿野史学についての報告を行った(その他の参加者:ジャーナリスト・新川明、詩人・川満信一、陶芸家・松島朝義、同志社大・冨山一郎、東京経済大・戸邉秀明)。この座談会の模様は、森・冨山編による論集に収録し、近刊予定である。 また女性史研究の草分けの一人、もろさわ・ようこ氏に8月10日、長野県の財団法人・志縁の苑でインタビューを行い、また9月7日に同場所で開催された同苑31周年記念集会に参加、翌日に継続インタビューを行い、女性史・離島史から本研究を捉え直すための指導をいただいた。 研究期間の前半で資料収集し確立した社会運動史・社会思想史はすでに森宣雄・鳥山淳編著『「島ぐるみ闘争」はどう準備されたか』(不二出版、2013年)で公刊したが、後半ではそれを民衆史・女性史の広がりの中に位置付け、第二次大戦後の沖縄戦後70年の通史へと昇華させ、この通史作品の中で沖縄の独自な歴史哲学を表現する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属機関の聖トマス大学が平成26年度に入った4月2日、当該年度に新学部を設置申請する予定を変更し閉校する方針を発表し、4月末日を以て全教員(無期雇用)の休業を命じ、10月末日を以て解雇通告するに至った。この休業・解雇措置は神戸地裁の和解勧告により平成27年7月に撤回されたが、その間研究環境・発表予定の大学紀要などが失われたため、予定通りの研究遂行に支障が生じ、成果発表を行えなかった。しかし研究自体は上記のように進め、その成果発表は出版社において公刊する形での計画が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度においては『シリーズ ひとびとの精神史』(岩波書店)第8巻で単著論文を発表、第9巻でインタビュー記録を発表、森宣雄・冨山一郎共編著『あま世への道』(仮題、法政大学出版局)で戦後沖縄民衆史について発表し、さらに単著『岩波現代全書 沖縄戦後史』(仮題、岩波書店)でトータルな沖縄現代史の通史をまとめる計画である。 この集大成作業を進めながら、補足的な資料収集・インタビュー調査を実施するが、平成26年度の作業の遅れを補足するべく、1年間研究期間を延長し、研究課題の達成に遺漏なきを期したい。
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Causes of Carryover |
所属機関の聖トマス大学が平成26年度4月2日に入ってから、当該年度に新学部を設置申請する予定を変更し閉校する方針を発表し、4月末日を以て教員の休業を命じ、10月末日を以て解雇通告するに至った。この休業・解雇措置は神戸地裁の和解勧告により平成27年7月に撤回されたが、その間研究環境・発表予定の大学紀要などが失われたため、予定通りの研究遂行に支障が生じ、成果発表を行えなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定通り研究期間の後半はこれまでの研究の集大成の成果発表と、そのための補足的な調査に取り組む。 平成27年度は論著の執筆公刊、そのための補足調査を進め、平成28年度は編著書2冊、単著1冊にわたる成果の総括を行い、到達点と残された課題、新たに発見した課題の整理を行う計画である。
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Research Products
(1 results)