2013 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における企業家の社会史-政治・経済・文化-
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24520794
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Research Institution | Kitakyushu Museum of Natural History and Human History |
Principal Investigator |
日比野 利信 北九州市立自然史・歴史博物館, その他部局等, その他 (90372234)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 尚史 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (60262086)
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Keywords | 企業家 / 地方財閥 / 社会史 / 安川敬一郎 / 北九州 / 筑豊 / 石炭 / 美術品 |
Research Abstract |
本共同研究の全メンバーが参加して、各メンバーの研究の進行状況について確認・検討する中間報告会を行った。特に第2回では、九州大学が所蔵する麻生家文書(同じく筑豊御三家に数えられる麻生太吉の関係資料)の中麻生太吉宛安川敬一郎書簡が少なからず残されており、その内容が紹介されたほか、安川の次兄松本潜の義祖父松本平内が中心的に担った福岡藩の石炭専売制の実態や、地方財閥に成長した安川・松本家と地元若松・戸畑の関係など最新の研究成果が報告された。また本年度より能に関する専門研究者にも報告会に参加していただき、近代文化の一環としての能を企業家が担ったという重要なテーマを追加して研究を進めていくことが可能になった。2回の中間報告会に合わせて、筑豊の炭鉱家の邸宅と佐賀県内に残る明治炭鉱(安川が創業)の跡地の現地調査を行った。石炭業を中心とする企業家の生活のありようや地域における意味・存在感などについて認識を深めることができた。 研究代表者の日比野利信、研究協力者の富岡優子が引き続き東京で企業家の資料やコレクションと展示の調査を行った。また従来研究に活用されていた敬一郎の5男安川第五郎日記の所在について、引き続き関係者を通して捜索したところ、やはり安川電機東京本社にあったということだが、英文の日記が一部出てきたほか発見にいたらなかった。北九州市立戸畑図書館には安川・松本家や明治鉱業の関係資料があるのではないかという情報を得たが、廃棄されたという話も伝わっており、図書館移転のため確認できなかった。 以上より、2年目においては、各メンバーがそれぞれのテーマについて調査研究を継続して行い、その成果を適宜報告・確認して、本研究が持つ有効性と可能性を資料に即して再認識、共有することができた。しかし資料的には新たな発見があった一方で、期待していた資料の存在が確認できず、さらなる追跡が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
メンバー間において、確かな手ごたえをもって研究の進展が見られる場合と、そこまでにはまったくいたらない場合と、メンバー間の進行状況にかなりの差がある。全体として論文などのかたちで研究成果を公表するにはいたっていない。また前年度概要調査を実施した松本家資料の詳細調査を行うことはできなかった。 「遅れ」の最大の理由は、研究代表者の日比野利信が博物館学芸員として北九州市制50周年記念と銘打った3つの展覧会を中心的に担当したこともあって、主として時間的制約によって、共同研究を推進し、あるいは自身の研究を大きく展開することができなかったことが大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の基本資料である安川家資料(収集美術品を含む)のさらなる整理・研究を行うとともに、松本家資料の詳細調査を確実に実施して目録を完成させる。ほかの安川・松本家資料についてもできるかぎり探索する。麻生家文書をはじめ他の企業家や政治家の関係資料についても漏れのないように調査を行う。以上の成果を報告書に反映させて、今後の研究活用に資する。 各メンバーの研究を継続実施し、成果を報告会で確認した後、文章化して報告書に反映させる。それにより、本研究の到達点と課題を明確にして次の研究に備える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者である日比野利信が博物館学芸員として展覧会3本を担当するなどの事情により、本研究を主導・推進していくための時間を確保できず、自身としても、ほかの参加メンバーに関しても、人員を雇用しての資料の整理や調査を積極的に実施できなかった。そのことが研究の遅れとそれによる使用額の余剰を生じさせた最大の理由と考えている。 遅れを取り戻すべく、自身としても、ほかのメンバーにはたらきかけても、また人員を雇用しての資料の整理や調査を滞りなく実施する。それによって得られたデータベースを各メンバーの研究成果とともに報告書にまとめて公開する。支給額はそれにより確実かつ有効に使用できる。
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