2014 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における企業家の社会史-政治・経済・文化-
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24520794
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Research Institution | Kitakyushu Museum of Natural History and Human History |
Principal Investigator |
日比野 利信 北九州市立自然史・歴史博物館, その他部局等, その他 (90372234)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 尚史 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (60262086)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 地方財閥 / 地方企業家 / 安川敬一郎 / 安川・松本家 / 地域政治 / 日中合弁事業 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一に、安川・松本家の事業展開について、1)第一次世界大戦・戦後の安川・松本家の資産運用の詳細、2)基幹会社である明治鉱業が大正時代に進めた朝鮮半島での鉱山・農場経営の展開、3)大正~昭和初期の日中合弁会社九州製鋼の経営状況、製鉄・製鋼業の動向との関連、安川・松本家における同社の意味が検討され、明治後期から大正・昭和初期にいたる安川・松本家の事業展開や経営状況が子細に、また一貫したかたちで明らかになってきた。 第二に、政治史では1)「地方財閥」系列企業の「会社議員」に注目するという新しい視点で地域政治と「地方財閥」の関連が明らかにされた。2)膨大な麻生家文書の調査の端緒を開き、特に「安川氏福岡市立候補に関する書類」により、大正6年の第13回総選挙における福岡市選挙区の動向について、安川擁立をめぐる麻生太吉等と安川・松本の交渉を中心に検討された。これらに他の関係者の資料や新聞資料が加わって、他に類例のないほどの密度で大正時代の福岡市の政治状況や政治動向を明らかにできる。 第三に、近年企業家の美術品収集や茶の湯愛好など文化史的役割に注目した研究が進展しているが、本研究では1)安川敬一郎の美術品収集と安川家の伝来作品、2)安川の能楽愛好・支援、3)企業家などが先駆的に担った近代の旅行文化について検討した。いずれも他の企業家や同時代人との比較も含めて、さらなる研究の発展が求められる。 第四に、日記を欠き、資料的制約の大きい安川の青年時代について、後の回顧的文章の語りに注目して接近し、伝記的研究の可能性を追求した。 以上のように、地方企業家から「地方財閥」に成長した安川敬一郎および安川・松本家について多面的な視点・分野で研究を進展させることができた。研究成果を報告書216頁にまとめた。今後それらを総合・発展させて、安川敬一郎の伝記的研究・総合的研究のさらなる進展を期したい。
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