2014 Fiscal Year Annual Research Report
元代の両淮・両浙における漕運と塩の流通 ー商人集団・官僚の動向を手がかりとしてー
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24520805
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
矢澤 知行 愛媛大学, 教育学部, 教授 (60304664)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 東洋史 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は,前年度までの研究と史資料の収集を継続しつつ,漕運・塩流通の実態や商人集団・官僚の動向という側面から元代の社会経済の実像を具体的に明らかにし,その成果を学術論文「元代淮浙における塩政の展開」などにまとめた。 従来の研究では,元代における塩政の展開を,塩法の弊害に対応して次々と施策が講じられたものと理解される傾向にあったが,本研究では,塩政に関与していた様々な立場の存在に着目することによって,塩政の展開を別の視角から捉えることができた。すなわち,淮浙地域への経済的支配の主体者は基本的には元朝政府であったが,仔細に見れば,大カアンの帝室やモンゴル貴族,ムスリム商人,オルトクらが淮浙地域の経営に参入していたし,漢人官僚は関係官署に属して塩政に関与し,在地の士人や塩商,豪民たちもそれぞれ権益の確保に動いていた。そうした状況の一端を,淮浙地域における塩政の展開に沿って具体的に明らかにすることができた。 その上で,元代淮浙における塩政の展開過程には,①1290-1300年代,②1330-40年代という二つの緩やかな画期が見られるという仮説を立てることができた。①の画期では,尚書省派の勢力が後退し,中書省派が主導権を握る元朝政府によって,漢人官僚らを用いた新たな塩政体制が構築され,淮浙地域の塩課を直接的に徴収することを意図したカク塩法が施行された。しかし,在地の豪民・塩商らの勢力伸長や塩価の騰貴に伴い,②の画期を経て,やがて通商法へと回帰することとなった。 なお,この仮説の実証作業は,平成27年度に開始される新たな研究課題「元代江南における財務官僚群の動向と在地農商諸勢力の伸張に関する研究」へと発展的に引き継がれている。
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Research Products
(1 results)