2015 Fiscal Year Research-status Report
イスラーム帝国におけるハーッサに関する研究ー家産帝国理論構築に向けてー
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24520807
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
前田 弘毅 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (90374701)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | サファヴィー朝 / イラン / コーカサス / ハーッサ / 家産帝国 |
Outline of Annual Research Achievements |
サファヴィー朝に仕えたコーカサス出身エリート軍人・政治集団の帝国統治における位置づけについて研究を進めた。アッバース一世の側に仕えながら、出身地グルジアにおける複雑な政治駆け引きも独自に進めたギオルギ・サアカゼについて、出身地グルジアの学会において報告を行った。特に1625年の反乱について、ペルシア語史料とグルジア語史料を利用して、家産帝国の核心部に移植された帝国の新要素が出身地に基づく独自のネットワークを維持・さらに強化した上で、大規模な反乱に至った過程について明らかにした。学会はグルジア(ジョージア)科学アカデミーが初めて開催した学術総会(コングレス)であり、現地の研究者はもとより、欧米や北コーカサスも含むロシア、ルーマニアなどの東欧諸国からの参加者と意見交換に努めた。また、17・18世紀の中東における奴隷の問題について、境界人としての側面に注目して、特に奴隷エリートに関して邦文で解説した他、コーカサス出身者が中東地域で果たした歴史的役割の観点から、イランにおける事例とエジプトにおける事例を比較した論文を英語で発表した。後者はプリンストン大学から論文集としても刊行される予定であり、国際的な研究成果である。いずれも民族や宗教の境域をまたぎつつ、独自の活動を繰り広げたものである。自らのアイデンティティを保ちながら、王権の手足として王国秩序の担い手として活動したコーカサス出身者の家産帝国における役割を改めて検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
境界領域を超えた活動について、様々な具体例を用いて明らかにしてきた。また、中央における活動についても、より詳細な検討を加えてきた。ただし、サファヴィー帝国中央政府・宮廷における活動に加えて、地方における活動とその意味について検討する必要があるが、史資料収集から分析まで幅広い考察が必要であり、当初の計画に比べると若干遅れている。この点に関して再度データをまとめる必要がある。また、出身地との関係についても国際関係をより幅広い観点から捉え直す必要があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
中央宮廷における役割をより明確なものとして、王朝におけるその活動の全体像を再構築するためにも、今後は帝国権力の地方における担い手としての姿について、より詳しく検討する必要がある。そのために、地方史における記述や地方への派遣における記述などを改めて読み込み、考察を加える。
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Causes of Carryover |
課題研究遂行にあたり、中央・地方関係など、課題達成が遅れており、より考察を深める必要がある領域が残っており、邦文・欧文による成果のとりまとめ作業が残っているためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
関連図書のさらなる収集やこれまでに抽出したデータのとりまとめと印刷・校閲などを含む成果公表などに関係する費用が必要である。
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Research Products
(3 results)