2014 Fiscal Year Annual Research Report
中華民国期における西北「回民軍閥」の基礎的研究:非漢人系「軍閥」の事例研究として
Project/Area Number |
24520813
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
安藤 潤一郎 東洋大学, アジア文化研究所, 客員研究員 (10597157)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 中国西北 / 回民 / 回族 / 軍閥 / 地域権力 / 民族問題 / 日中戦争 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に引き続き,主に寧夏馬福祥系と青海馬麒系の二つの「回民軍閥」勢力に焦点を当てて,各勢力の〈地域権力としての特徴〉および〈中国国家との関係〉に関する一体的考察をおこない,前年度の研究成果の深化と具体的な「肉付け」を進めるとともに,各「軍閥」集団の経済的基盤という部面からの分析の進捗もめざした。史料・資料の調査と収集も継続し,本年度はとりわけ各地の地方図書館・档案館における文書史料の閲覧・集積に努めた。その結果,前年度の成果をも踏まえつつ,以下の点を実証的に明らかにしえた。 ①両「軍閥」勢力は,辛亥革命後の中華民国の国家的枠組みをめぐる内戦・抗争や「辺防」問題との密接な連関の中で地域権力を確立した。また,両勢力の経済的基盤としては,羊毛などの特産品の東部沿海地域へ向けた移出が重要な位置を占めており,これも,中国経済の広域的な構造と不可分に結びついていた。 ②ゆえに,その地域支配の構造・性質は,見かけ上の濃厚な割拠的色彩にもかかわらず,中国ナショナリズムの文脈との「相補性」を強く帯びることとなった。かくして,国民政府による「西北開発」の試みや日中戦争期の統合強化政策のもとでも,両「軍閥」勢力の地域支配はむしろ強化されていき,他方,両勢力とも日本の取り込み工作に応じることはなかった。 ③そうしたプロセスは,地域の回民のイスラーム信仰の形や社会的・文化的伝統に対する積極的な介入としても表れ,回民社会にも大きな変容を引き起こした。 ④両馬氏の地域権力にとって最大のライバルになったのは,日中戦争期に西北諸省に勢力を広げた中国共産党であり,西北「回民軍閥」諸勢力の最終的な解体は共産党への敗北によってもたらされた。 ただ,上記の成果の取りまとめと公開という面では,かなりの遅れが生じてしまっている。よって,27年度は別課題による科研費支給は受けずに,この作業に専念する。
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