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2012 Fiscal Year Research-status Report

女のマスキュリニティ―第一次世界大戦期イギリスにおけるジェンダーとミリタリズム―

Research Project

Project/Area Number 24520849
Research Category

Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

Research InstitutionSetsunan University

Principal Investigator

林田 敏子  摂南大学, 外国語学部, 准教授 (10340853)

Project Period (FY) 2012-04-01 – 2015-03-31
Keywords西洋史 / イギリス史 / ジェンダー / マスキュリニティ / ミリタリズム
Research Abstract

第一次世界大戦期の女性のイメージを、「犠牲者」「戦争を鼓舞する女神」「平和のシンボル」「戦う女」という4つのカテゴリーにわけ、表象と言説という二つの視点から考察した。Imperial War Museum所蔵の募兵ポスターやビラをもちいた表象分析と、ベルギー侵攻時のドイツ軍による残虐行為を調査したブライス委員会報告(兵士や民間人の証言集を含む)の言説分析を組み合わせながら、大戦時のプロパガンダ戦に女性がいかに「動員」されたかを明らかにした。
さらに、女性の戦時活動をヴォランティア(救急・福祉・秩序維持)と労働代替(男性労働の補助および代替)とにわけて整理し、その担い手や活動内容を詳細に分析した。とくに、それまで男性が独占してきた職業分野への女性の進出が、社会的にどのように評価されたのか、また、女性が自らの体験にいかなる意味づけをおこなったのかを、『モーニング・ポスト』紙上で展開された論争を手がかりに分析した。
研究を通して浮かび上がってきたのは、女性による代替労働が有した重要性(緊急性)と、ジェンダー秩序の崩壊に対する社会の懸念とのコントラストである。女性は「戦場で血を流す」という意味では「戦えない性」であったが、総力戦、持久戦のなかで、さまざまな形で男性の代わりをつとめた。一方で、そうした戦時労働の多くは、「産む性」としての女性の体(母体)を危険にさらすものとして、また、伝統的な性的役割分業のあり方に修正を迫るものとして危険視された。大戦期の女性に与えられた‘production'(生産)と ‘reproduction'(再生産=生殖)という相反する二つの機能は、戦後のジェンダー秩序再編のさいにも大きな問題でありつづけたのである。
以上の研究成果を、『戦う女、戦えない女―第一次世界大戦期のジェンダーとセクシュアリティ―』(人文書院、近刊)と題する著書にまとめた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

今年度の研究は、ベルギーでのドイツ軍の残虐行為をめぐる言説分析から着手した。大戦史におけるベルギー戦の位置づけについては、すでに二次文献でおさえてあったため、ドイツ軍の残虐行為を告発したブライス委員会報告の言説分析にスムーズに入ることができた。ブライス報告が有したプロパガンダ機能については、国内だけでなく、広く諸外国の新聞記事を網羅しながら考察した。
夏期に実施した海外調査(イギリス、ロンドン)では、対象をImperial War Museum所蔵のポスターおよびビラに限定して作業効率を高めながら、女性を前面に出したプロパガンダの特徴をさぐる上で重要な視点をいくつか得ることができた。
世論分析で使用する予定だった新聞『タイムズ』については、論争に発展したものが比較的少なかったため、従来の研究であまり注目されてこなかった『モーニング・ポスト』(主要紙の一つ)での論争を取り上げ、世論分析の一助とした。
研究会での数度におよぶ発表を経て、研究成果の一部を著書としてまとめた。よって、当初の研究目標はおおむね達成できたと判断する。

Strategy for Future Research Activity

今後は、「銃後の世界」にとどまることなく、戦場へと赴いた「戦う女」へと考察の対象を広げていく。具体的には、前線での軍事活動の補助を掲げて発足した「女性ヴォランティア予備軍」と、これを基盤に創設された陸軍の公的認可組織「陸軍女性補助部隊」に焦点をあて、その担い手および活動内容を詳細に分析する。さらに、「軍隊のなかの女性」の地位や役割をめぐる陸軍と女性軍事組織の認識の違いを明らかにすることで、大戦期のジェンダー秩序の揺らぎについて考察していきたい。
さらに、女性ヴォランタリ予備軍が主に上・中流階級女性で構成されていたこと、その後身組織である陸軍女性補助部隊が労働者階級女性のリクルートに苦戦したことに注目しながら、階級・ジェンダー・ミリタリズムの3点から、この組織が戦時において果たした役割について考えていく。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

次年度は、Imperial War Museum に所蔵されている史料のうち、女性軍事組織のオフィシャル史料と、組織にかかわった女性たちが残した日記や書簡をできるだけ幅広く収集・分析する。とくに書簡をはじめとする個人史料は未整理なものが多く、その全体像を把握するのにかなりの時間がかかることが予想される。そのため、次年度は9月と翌年2月に2度の海外出張を予定している。また、Imperial War Museumのオンライン・データベース(マイクロフィルム化された一部の史料が検索・閲覧できる)の購入も検討している。
また、ジェンダー関連の文献のみならず、ミリタリズムや階級をテーマとする文献を、時代や国を限定せず広く収集して幅広い知見を得るとともに、女性軍事組織を対象とした各種委員会報告書(京都大学図書館で閲覧・複写可)や新聞記事(British Library所蔵。閲覧・複写可)にも目を通していきたい。

  • Research Products

    (1 results)

All 2013

All Book (1 results)

  • [Book] 戦う女、戦えない女―第一次世界大戦期のジェンダーとセクシュアリティ―2013

    • Author(s)
      林田敏子
    • Total Pages
      162
    • Publisher
      人文書院

URL: 

Published: 2014-07-24  

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