2012 Fiscal Year Research-status Report
韓国出土ヒスイ勾玉の集成と流通過程に関する考古学的研究
Project/Area Number |
24520854
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
高橋 浩二 富山大学, 人文学部, 准教授 (10322108)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 考古学 / ヒスイ勾玉 / 翡翠 / 韓半島 / 集成 / 古墳時代 / 流通 |
Research Abstract |
本研究は、韓国出土のヒスイ勾玉を集成し、日本の弥生時代から古墳時代のものと比較するとともに、分布や出土数の変化などの検討を通して、日本列島から韓半島へのヒスイ勾玉の流通過程を明らかにしようとするものである。 今年度は、まず国内および韓国の研究機関、大学、博物館が所蔵する発掘調査報告書を活用させていただき、申請者が以前に実施した釜山・金海におけるヒスイ勾玉の集成に、1点の新たな資料を追加した。合わせて、隣接する馬山などにおけるヒスイ勾玉の集成を行った。このほか、ヒスイ勾玉が集中して出土している慶州および周辺地域における集成をすすめた。その結果、韓半島におけるヒスイ勾玉は、今のところ釜山・金海にいち早く出現すること、それらは日本列島におけるヒスイ勾玉と同じく頸飾りとしての着装が主体であること、一つの古墳から出土する点数は基本的に1点から数点程度であることが再確認された。それとともに、このようなあり方は、頸飾りに加えて冠や胸飾り、腰佩などにも着装が認められ、また一つの古墳から出土する点数も数十点に及ぶ場合がある新羅における古墳のあり方とは大きく異なることがあらためて確認された。 資料の巡検に関しては、韓国出土のヒスイ勾玉やガラス玉などについて実施した。また、日本における古墳出土のヒスイ勾玉に加えて、流通過程や交流関係を考える上で重要な渡来系遺物に対して巡検を行った。このほか、関連する研究集会に参加し、倭と韓半島諸地域との流通や交流関係に関する研究動向ついて新たな知見を得るとともに、研究協力者の協力を得ながら、日韓の研究者との意見交換や文献探索などの情報収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、韓国出土のヒスイ勾玉の集成的研究がすべての基礎となるため、今年度はこれを優先して行うことにした。釜山・金海とその周辺地域における集成に関しては、今のところ目的通り順調に進展している。しかし、慶州における集成に関しては、ヒスイ勾玉の点数が膨大である上に、古墳の調査年代が古く、報告書に図が未掲載で、記述も不十分な場合が少なからずあり、順調に進展しているとは言えない。資料の実見に関しても十分にすすめることができなかった。韓半島におけるヒスイ勾玉の分布や出土数の変化を明らかにし、さらにこのことを踏まえて日本列島から韓半島へのヒスイ勾玉の流通過程を検討する上で、5世紀以後に出土数が急激に増加する慶州におけるヒスイ勾玉の集成は、きわめて重要であると位置付けられるため、現在までの達成度についてやや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの達成度にも記したように、本研究は韓国出土のヒスイ勾玉の集成的研究を基礎とするものであり、とりわけ新羅を中心とする古墳出土の資料が重要であると位置付けられるため、次年度からは引き続いて慶州におけるヒスイ勾玉の集成を重点的に行う。それとともに、研究協力者の協力を得ながら、可能な限り実測と写真撮影による資料化をすすめる。実見の調整が整わない場合でも資料の巡検は行う。また、合わせて韓国における研究の現状に関する情報収集や文献探索などを実施する。国内の資料調査に関しては、各地における古墳出土のヒスイ勾玉や他の玉類、渡来系遺物のほか、ヒスイ原産地の糸魚川地域における勾玉製作遺跡の資料などに関する巡検を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費に関しては、持ち運び可能な小形軽量で高機能のノートパソコンを購入する予定であったが、適当な器種が見つからなかったため、次年度に購入することにした。また、ヒスイ勾玉の集成および資料化が順調に進展し、一定の地域における集成がまとまれば、資料収集整理に対する補助や専門的知識の提供を得ながら、印刷費を使って集成の成果を分冊して発行することを考えていたが、集成がさらにまとまった段階で発行することに変更した。次年度は、慶州におけるヒスイ勾玉の集成を重点的に行う計画であることに加えて、韓国の博物館において新羅を中心とする古墳出土の装身具類や玉類に関する特別展が予定されており、主に旅費として充当することを考えている。
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