2012 Fiscal Year Research-status Report
エジプト王朝時代の聖地の形成と展開に関する考古学的研究
Project/Area Number |
24520869
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
河合 望 早稲田大学, 文学学術院, その他 (00460056)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エジプト / 考古学 / 王朝時代 / 聖地 / 祭祀 / 埋葬 / アブ・シール |
Research Abstract |
本研究は、エジプト、アブ・シール南丘陵遺跡での考古学的発掘調査の成果をもとにエジプト王朝時代の聖地の形成と展開を明らかにすることを目的とする。 2012年度の業績は、まず4月28日に米国プロビデンスで開催されたAmerican Research Center in Egyptの第63回大会にて、"The Newly Discovered Tomb-chapel of Isisnofret at Northwest Saqqara"と題して当該遺跡で発見された新王国時代第19王朝のラメセス2世の孫娘であるイシスネフェルトの神殿形貴族墓および埋葬室に関する研究を発表した。夏までの国内における研究は、今後海外の博物館・美術館等にて当該遺跡で出土した遺物の類例の資料調査を行うために図録や学術書をもとに集成を行った。8月6日から9月29日にかけて、エジプト、アブ・シール南丘陵遺跡の第22次調査に参加し、調査主任として発掘調査と保存修復作業を指揮し、遺物倉庫においては出土遺物の研究を行った。第22次調査では、丘陵頂部、丘陵南東斜面、丘陵南東部の3カ所で発掘調査を実施した。特に丘陵南東部において新しい遺構が検出された。新しい遺構は、北側の発掘区Aと南側の発掘区Bで確認された。発掘区Aでは、岩盤を人為的に掘削した痕跡がみられ、その上に広い範囲で炭化物と焼成を受けた珪岩片を多く含む層が確認された。また、大型の珪岩も散在し、中には楔の後が見られるものがあった。これらの証拠から、この場所で古代における石材の加工および採石の活動があったと推察された。発掘区Bでは、浅いピットが3基検出され、これらも採石活動に関連するものと推察された。これらの成果は、11月の日本オリエント学会の大会および2013年3月の日本西アジア考古学会の西アジア発掘調査報告会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年のエジプト革命によりエジプトにおける現地調査に影響が出ていたが、2012年度はエジプト政府考古省より遺跡での調査の許可を得ることができ、予定通りに調査研究を実施することができ研究の進展があった。ただし、当初予定していた英国の博物館、研究機関での調査研究は、国内での日程が多忙であったため都合がつかず、実施することができなかった。今年度以降の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度、26年度においても引き続き毎年夏にエジプト、アブ・シール南丘陵遺跡調査に参加し、発掘調査、遺物の研究、周辺遺跡の踏査およびエジプトの他の地域の遺跡の比較調査を継続する。また研究の対象とする遺物および関連する遺物の研究のため、カイロのエジプト博物館およびサッカラのイムヘテプ博物館での資料調査を実施する。 昨年度は実施することが不可能であったが、欧米の博物館、美術館等においてアブ・シール南丘陵遺跡で出土した遺物の類例および同様な「聖地」としてみなされる神殿や祠堂の遺跡から出土した遺物の比較調査を実施する予定である。具体的には英国の大英博物館、ロンドン大学ピートリ、エジプト考古学博物館、オックスフォード大学アシュモレアン博物館、ドイツのベルリン、エジプト博物館、ミュンヘン、エジプト博物館、フランスのルーヴル美術館、米国のメトロポリタン美術館、ボストン美術館等において資料調査を実施する予定である。 本研究の成果は適宜国際学会やワークショップ等を中心に積極的に発表し、査読付きの欧文専門学術雑誌に論文を投稿していく予定である。国内向けには国内学会における発表、論文等での発表はもちろんのこと、最終年度には本研究の成果をまとめた一般書の出版を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究計画は、8月までの期間は、これまで昨年度実施したエジプト、アブ・シール南丘陵遺跡第22次発掘調査の慨報の作成、出土遺物のデータ整理、類例の検索、分析を継続する。また、9月に参加を予定しているエジプト、アレキサンドリアで予定している第11回国際エジプト学者会議の発表の準備、国際雑誌の原稿の執筆を行う。7月頃には、約1週間の予定でドイツ、ベルリン、エジプト博物館およびミュンヘン、エジプト博物館での資料調査を実施する予定である。調査のための渡航費、滞在費、資料調査における費用が必要となる。 8月上旬から9月下旬にかけては、エジプト、アブ・シール南丘陵遺跡にて第23次調査を予定しており、発掘調査、遺物の整理分析、周辺遺跡の踏査等を予定している。調査のための渡航費、滞在費、資料調査における費用が必要となる。途中9月13日から20日の間は現地調査を中断し、アレキサンドリアの新図書館で開催が予定されている第11回国際エジプト学者会議にて本研究の成果の一部を発表する予定である。10月からは、アブ・シール南丘陵遺跡の第23次調査の成果のまとめを行う。概報の執筆、出土遺物のデータ整理、遺構、遺物の類例研究、分析を行う。11月24日、25日には、第55回日本オリエント学会にて本研究の成果の一部を口頭にて、第23次調査の概要の報告をポスターにて発表する予定である。12月末から2014年1月上旬までは、ルクソール西岸貴族墓の発掘調査に参加する予定であるが、その間に上エジプト地域の神殿遺構などの「聖地」の比較調査を行い、アブ・シール南丘陵遺跡の独自性を明らかにしたい。2014年2月から3月にかけては、昨年度資料調査の実施できなかった英国の大英博物館、ロンドン大学、オックスフォード大学などで調査を実施する予定である。
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[Journal Article] Khaemwaset2012
Author(s)
Nozomu Kawai
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Journal Title
The Encyclopedia of Ancient History, Wiley-Blackwell
Volume: 0
Pages: 3739-3741
DOI
Peer Reviewed
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