2012 Fiscal Year Research-status Report
社会的少数者・弱者保護のための表現規制のあり方に関する比較法研究
Project/Area Number |
24530003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
東川 浩二 金沢大学, 法学系, 教授 (60334744)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Free Speech |
Research Abstract |
平成24年度は、概ね当初の研究計画を実施し、一定の成果を上げることができた。 資料の蒐集については、アメリカ法のデータベースを用いて、判例と論文を多く蒐集し、整理した。一般の文献については、24年度の研究のみならず、今後の研究の基礎的文献として利用する予定であり、3年間の研究における基礎を確立することができたと言える。 これらの文献を用いて行った研究の成果は、平成25年1月27日に北陸公法判例研究会において「嘘つき・ほら吹き・言論規制―United States v. Alvarez, 130 S. Ct. 2537 (2012)を中心に」として報告した。これは虚偽の言論を規制する法律の合憲性が問題となり、その違憲審査基準が問題になるという、本研究が最も焦点をあてる内容が取り上げられた事例である。同判例については雑誌アメリカ法に判例紹介を執筆し、25年中には出版される見通しである。 インタビューについては、先方とのスケジュールの調整のために、時期と場所の変更があったものの、初期の計画を実施することができた。Ravitch教授からは、憲法判例の分析における事実調査(または事実認定)の重要性について指摘を受けた。またUCLA School of Lawで行われたKenrick准教授とのインタビューでは、言論規制法の分析において、憲法規範の問題にのみ注目することの危険性、具体的には、刑事法の諸規定や概念を応用することの重要性が指摘された。言論規制法の適用において行為者の主観面に注目する必要があり、その際には刑事法の知見が有用であるという指摘は、憲法規範の文言分析や判例研究を中心とする我が国の憲法学とは違った視点を提供しており、有益であった。また、同ロースクールの他の教授との意見交換も行われ、今後の研究において協力を得られる人脈が拡大し、その意味でも有意義な訪問調査となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に記載した研究は、実施時期や場所の多少の変更があったものの、予定していたものについては全て実施することができた。 違憲審査基準の問題については、用語法が、日本人研究者にとってはやや複雑な展開を見せていることもあって、より多くの時間をかける必要性を感じた。また、表現規制以外の分野における違憲審査基準の問題をあわせて検討しなければならないという、課題も浮き彫りになった。 しかしながら、日常における資料蒐集や資料分析に加えて、出張やその他の費用支出を伴う研究計画については、適切かつ確実に行うことができ、成果を上げることができた。従って研究は概ね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、表現規制の問題に加えて、ある言論によって発生した害悪を民事訴訟において救済しようとすることが可能か否かを検討する研究に着手する。 具体的には、24年度において蒐集した資料をより詳細に整理分類し、簡易データベースの構築を段階的に進めて行く予定である。データベースの構築については本研究の最終年度に一定の成果を上げるように準備するが、そこで扱われるデータについては多ければ多いほど良いため、早い段階から蒐集と整理を始める必要がある。 また、我が国では、違法薬物の取引に関する情報が掲載されたインターネット上の掲示板の管理者が、情報を適切に削除したかったことを理由に書類送検されるという事案が発生しており、米国のロースクールの教授や実務家もこれに注目している。24年度に開拓した新たな人脈をもとに、これらの状況について適宜情報交換を行いながら、日本法の状況の分析と情報発信に努めたい。加えて24年度中に得た人脈から、米国以外における本問題に関する状況について情報を入手できるめどがついたため、可能であれば訪問調査を行いたい。 成果発表については論文の公表を予定しているので、確実に実施できるよう努めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度においても、おおよそ、旅費と物品で1:1くらいになるように使用する予定である。 24年度の余剰分については、物品請求時と実際の納入価格に多少の差額が発生したものが、特に、図書において累積したものである。これらは、25年度において、物品等に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)