2013 Fiscal Year Research-status Report
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24530017
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々木 雅寿 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (90215731)
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Keywords | 対話理論 / 対話 / カナダ憲法 / 日本国憲法 |
Research Abstract |
1 カナダ憲法の比較検討(対話のメカニズムと内容):平成25年度は、引き続きカナダにおける対話のメカニズムと具体的内容の解明を行うため、①対話を可能とする憲法の構造、②裁判所の判決の書き方、③議会の対応の仕方、④違憲判決を踏まえた新たな法律の違憲審査の在り方等を中心に分析した。 2 カナダでの本調査:平成25年9月12日から9月18日までの間、カナダのバンクーバーへ海外出張して、ブリティッシュ・コロンビア大学法科大学院で比較憲法およびカナダ憲法を担当している松井茂記教授から、本研究のレビューとアドバイスを受けるとともに、カナダの対話理論の最新の議論状況について説明を受け、議論を行った。 3 日本国憲法の検討(対話の事例分析):日本における最高裁と政治部門との対話の具体例として、最高裁が法律を違憲と判断した事案を中心に、判例の内容、国会審議の検討を行い、日本においても最高裁と国会や政治部門との対話が行われていることを実証した。最高裁と国会との対話には、最高裁の違憲判決⇒国会の法改正という一回的な対話と、最高裁の違憲判決⇒国会の法改正⇒最高裁の更なる違憲審査⇒国会の更なる法改正といった継続的な対話があることが明らかとなった。また、最高裁の違憲判決⇒地方公共団体の対応という最高裁と地方公共団体との対話も行われていることが明らかとなった。このような対話が実現しているのは、最高裁の違憲判決を尊重し、違憲判決に従った適切な立法措置等をとることが必要であるとの観念が国会や政治部門、地方公共団体に共有されているからである。ただ、最高裁が国会に対して法改正の必要性を示唆しても、最高裁が明示的な違憲判断を示さないと、国会が対応しないといった対話の失敗例もある。(佐々木雅寿著『対話的違憲審査の理論』(三省堂、2013年)参照)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カナダにおける対話の検討については、まず、日本で入手可能な資料に基づいて、カナダ最高裁の判例、学説および議会議事録を中心に分析する作業を進めた。分析すべき判例についての検討がほぼ終了し、おおむね計画どおり進んでいる。 平成25年9月12日から9月18日までの間、カナダのバンクーバーへ海外出張して、ブリティッシュ・コロンビア大学法科大学院の松井茂記教授から本研究のレビューとアドバイスを受けた。これもおおむね計画どおりの成果といえる。 日本の対話に関しては、主に、法律を違憲と判断した最高裁判例とその後の法律改正の動きを分析し、日本においても最高裁と国会や政治部門との対話が行われていることを実証的に示し、その内容を、単著『対話的違憲審査の理論』として公表した。これも、ほぼ計画どおりの進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
1 日本国憲法の検討(対話のメカニズムと内容):平成26年度前半は、日本で可能な対話のメカニズムとその具体的内容の解明を行う。その際、カナダ憲法の研究で得られた知見をふまえ、カナダ憲法の下で可能な対話のうち、カナダ憲法特有のものと、一般化・普遍化可能な要素の区分を試み、日本国憲法の下でも可能な対話の要素を探る。最終的な結論をまとめる前に、大阪市立大学の米沢教授(憲法学)・渡辺教授(憲法学)と意見交換をする。 2 補充研究:これまでの研究やカナダにおける調査等をふまえ、必要な補充研究を行う。特に、最新の判例や論文等を分析する必要がある。必要に応じて、東京大学、大阪市立大学、京都大学の図書館を利用して資料を入手する。 3 カナダ憲法に関するまとめ:カナダにおける対話のメカニズムと具体的内容に関する研究をまとめる。 4 研究成果のまとめと公表:平成26年度は、平成25年度の研究成果である単著『対話的違憲審査の理論』で検討できなかった①最新判例の分析と、②最高裁と政治部門との継続的対話の具体的効果についての分析を行い、論文として公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費に関しては、19,194円の残額が生じた。これは、経費の節減・効率的使用によって発生したものである。 この残額は、平成26年度の比較的早い段階で、日本国憲法の下での対話に関連する最新の図書等を購入するために使用する。
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Research Products
(2 results)