2012 Fiscal Year Research-status Report
マンションの老朽化・被災等に関する比較法的考察を基礎とした立法論研究
Project/Area Number |
24530103
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鎌野 邦樹 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (00204610)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / ドイツ:韓国:中国 / マンション / 区分所有 / 建物区分所有法 / 区分所有法 / 比較法 / 区分所有建物 |
Research Abstract |
本研究は、日本の区分所有法制の喫緊の課題であるマンションの維持・改良(耐震性確保を含む)並びに老朽化及び被災マンションに対する法的措置について調査・研究することを目的とするものであるところ、本年度においては、研究実施計画に従って、次の①~③の調査・研究を実施した。 ①基礎作業(外国法の日本語訳、日本法の英語訳) 本研究が対象とする外国法のうち、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカ、台湾の法令については既に日本語訳が完成していたが、これらについては最近の改正を踏まえての追加、法令に付加されているコメントのうちの重要部分の翻訳、及び、より適切の訳語への修正を行った。オ-ストリア法、スイス法、ベルギ-法等について、日本語訳に着手した。また、日本の区分所有法制の動向について、英文にて、早稲田大学比較法研究所のホ-ムペ-ジに掲載し、外国に向けても発信した。 ②研究会の開催と「立法例比較一覧表」の作成 合計7回の研究会を開催し、研究代表者および連携研究者(10名程度)の報告に基づき、各外国の法制について理解を深めると共に、比較すべき項目(維持・改良制度、建替え・解消制度、管理の体制・方式、規約の位置づけ、集会における多数決要件等)を10程度抽出し、「立法例一覧表」の作成に着手した。 ③海外研究協力者との情報・意見交換及び海外調査の実施 海外研究者として本年度は特にホイブライン教授(現オ-ストリア・インスブルック大学法学部教授、前ドイツ・ベルリン自由大学教授)との間で、Eメイルにて情報・意見交換を精力的に行った(延べ数は30回程度)ほか、カン教授(韓国)、権教授(中国)、戴教授=前大審院判事(台湾)等とも情報・意見交換を行った。海外調査については、フランスにおいて、法務省(民事局長)、住宅等担当省(住宅局次長)のほか住宅金融機関、不動産業協会に対してヒアリング調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究実績の概要」において記したように、本年度の「研究実施計画」にある調査研究を概ね実施することができた。ただし、「研究実施計画」の③に記載した海外調査については、計画段階ではドイツを予定していたが、訪問予定先の都合により日程調整が困難であったこと、および、主たる訪問先として予定していたホイブライン教授が平成25年度秋に来日予定であることから、平成24年度における海外調査はフランスにおいて実施することとした(結果としては、法務省および住宅担当省等に対するヒアリングを実施して多大の収穫があったことから、当初の計画以上の進展をとげることができた)。また、海外研究協力者として韓国のカン教授の招聘を予定していたが、同教授が怪我をして入院したために来日が困難となり、Eメイルにより情報・意見交換のみを行った。なお、アメリカ法に関し、マンション管理に関する全米の最大の機関(CAI)との間で情報・意見交換が可能となり、多くの情報を得たことは、当初の計画以上の進展である。 付言すると、本研究テ-マと関連する立法(「改正建築物耐震改修促進法」および「改正被災マンション法」)が平成25年度の通常国会において現在(平成25年5月)審議中であり、平成25年6月に成立の見込みであるが、特に後者の立法に関しては、研究代表者が法制審議会の委員として審議に参加し、その場で外国の立法例の状況に関して若干の発言をした。その発言内容は本研究の成果に関連するものであり、この点は、「当初の計画以上の進展」とも言えるであろうか。今後のわが国の立法においても、本研究の成果は、具体的な形で参照されるものと考える(今後、本研究を、立法にあたって参照に値するものにしていきたいと考えている)。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度および平成26年度においても、当初の研究実施計画に基づいて、次の①~③の調査・研究を推進することを予定している。 ①基礎作業 ドイツ、フランス、イギリス、アメリカ、台湾のほか、本研究が比較の対象とする外国の法令等について必要に応じて日本語訳を行う。平成25年度は、韓国法(改正法を含む)、オ-ストリア法、スイス法、ベルギ-法、ギリシャ法、オ-スリラリア法の翻訳を完成させる予定である。 ②研究会の開催と「立法例比較一覧表」 年間に5回程度の研究会を開催し、引き続いて連携研究者と共に調査研究を推進し、10数カ国の「立法例比較一覧表」を作成していく予定である。なお、可能な限り、単なる法令の比較だけではなく、各国の実態の把握に努めることとする。 ③海外研究協力者との継続的情報・意見交換および海外調査の実施 引き続き海外研究協力者等(ドイツのホイブライン教授、韓国のカン教授、中国の権教授、フランスおよびアメリカ等の関連機関等)との間で、Eメイル等を通じて、情報・意見交換を行っていく。海外調査については、平成25年度はベルギ-(ないしギリシャ)等のヨ-ロッパの国において、平成26年度はオ-ストリア・スイス(ないしイタリア)等のヨ-ロッパの国において実施することを予定している。 なお、本研究の成果は、平成26年6月開催の日本比較法学会のミニ・シンポジュウムにおいて発表する予定であり、現在その申請手続を進めている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に使用予定の研究費のうち43,097円については、平成25年度に使用することとした。当該研究費が生じたのは、平成24年度に海外研究協力者として招聘を予定していた韓国のカン教授が、上記のとおり、入院したために来日ができなかったことが主たる原因である(なお、招聘に係る旅費として予定していた金額の一部は、調査研究上必要な消耗品の購入にあてた)。 平成25年度は、上記研究費と合わせた1,343,097円の使用を予定しているが、その内訳は、国内旅費(主として連携研究者の研究会への出張旅費)600,000円、外国旅費(研究代表者および連携研究者の海外調査旅費)600,000円、および消耗品143,097円であり、平成25年度にカン教授の来日が可能となった場合の招聘に係る旅費は、上記外国旅費として予定している。
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Research Products
(3 results)