2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530117
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
陶久 利彦 東北学院大学, 法学部, 教授 (20154429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒木 修 関西大学, 法学部, 准教授 (10433509)
新井 誠 広島大学, 法務研究科, 教授 (20336415)
宮川 基 東北学院大学, 法学部, 准教授 (30271852)
佐々木 くみ 東北学院大学, 法学部, 准教授 (80438522)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 性風俗と法 |
Research Abstract |
(1)研究会を6月2日、9月22日、11月6日、3月21日の合計4回開催し、以下のようなテーマについて共同研究者が報告をし、議論を重ねた。①「風営法規の憲法問題―クラブ規制問題を素材に」、②「ラブホテル規制に係る法制度の現状」、③「旧刑法での姦通罪」、④「嫌悪感の法的位置づけ」 その一方で、上記研究会では、ゲストスピーカー4名が以下のようなテーマで報告・コメントをし、議論をした。⑤「人間の尊厳と性風俗」、⑥「イギリスの売春規制」、⑦「売春規制の歴史と現状-カナダの場合-」 (2)実態調査については、(イ)警察への取材を通じて、風俗関連業界への規制実態の解明を試みた。(ロ)大阪の遊郭跡を訪れ、当時の実態の一部を確認した。 見られるように、性風俗と法秩序という大きなテーマの下で、各研究者が自らの専門(=法哲学、憲法学、行政法学、刑法学)に根ざした接近方法を探ることから、共同研究は始まった。その後、各自が関心を持つ問題の研究に歩み出し、研究会を重ねた。その報告と議論を重ねる中で研究全体の深まりと広まりが可能となり、本研究は共同研究者相互の問題関心と領域との関連性が徐々に見え始めた段階にある。他方で、ゲストスピーカーからも大きな刺激を受けた。一つは、売春に関する英米法圏の動向に目を向けることができた。二つは、「人間の尊厳」という原理的アプローチの理論構成とその効果とを、ドイツを例として検討できた。三つは、我が国の具体的事件と関連づけて、生の情報を得たことも、大きな成果である。ただ、初年度では文献に基づく研究が主であり、実態調査が不十分であることは否めない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的は二つあった。一つは、性風俗及びその関連産業に関わる実定法学上の問題を検討することである。この点、憲法・行政法・刑法の3分野に渡る過去・現在の法規制研究は、現在の法規制の歴史的背景をあぶり出すと同時に、現在の性風俗関連法規制のあり方をかなり詳しく明らかにしつつある。同時に、性風俗関連法が「法の規制方法」という点で、かなり独特の色合いを持っていることが明らかになってきた。もとより、各法分野での検討は更に進められるべきであるが、当初予想していなかったような「法のあり方」にまで視野が及んだのは、望外の成果である。 もう一つは、法感覚や法感情といった法以前の心理的働きに視線を向けると同時に、性風俗をめぐる道徳をどのように捉えるかという問題だった。この点、「感情と法」一般に関する英米圏の議論をある程度描き出すことができたと同時に、特に「嫌悪感」の法的位置づけに関する考察が深まっているところである。 上記2点のいずれについても、2012年度は成果を公表できなかったが、2013年度は共同研究者各自の業績が順次公にされる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
言うまでもなく、性風俗に関連する法規制を憲法・行政法・刑法の分野から更に詳しく研究していく。更に、今年度は昨年度休暇を取っていた共同研究者の佐々木くみが復帰する。佐々木の関心は専ら憲法原理論にあるため、細かい法規制の有り様に原理的省察が加わることによって、昨年度よりも一層幅広い共同研究が可能になるだろうと、期待される。 今年度は、4月20日に臨床政治学会で売春関連のフォーラムを持ち、そこで共同研究者の宮川と陶久とがコメントを担当した。このように、性風俗に関連する対象を少しずつ拡大し、議論の幅を広げたいと考える。 今年度も研究会を定期的に開く予定である。さしあたり7月には「ハート・デブリン論争以降の英米圏での論争」と「ドイツの売春法規制」をテーマにする。その後、各自の進捗状況に応じた報告と議論の機会を持ち、共同研究の実をあげたいと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基本的に昨年度同様、研究会への出張費と該当図書購入費に研究費は充てられる。加えて、実態調査にも一定額を使いたいと考えているが、調査対象となる人・組織等との関連もあるから、費用等については未定である。
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