2012 Fiscal Year Research-status Report
原子力政策決定における公共空間-日・カナダ・アメリカの政策ネットワーク
Project/Area Number |
24530154
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kaetsu University |
Principal Investigator |
安田 利枝 嘉悦大学, 経営経済学部, 教授 (50230230)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アメリカ合衆国 |
Research Abstract |
事例研究 事例研究として取りあげた上関原子力発電所(計画中)については、年表をほぼ完成させ事実関係の再確認のため、山口県上関町とこの問題に長く関わってきた2団体に2013年8月に取材、また、同じく8月にオレゴン州トロージャン原子力発電所廃止に向けた3度のイニシャチブの中心メンバー3人に取材、その私的所蔵資料の約3分の2をPDF化させていただいた。同じく8月バーモント州ヤンキー原子力発電所についての裁判資料を州政府にて入手、州政府の弁護士とバーモントヤンキー原発の研究者に取材を実施した。 現地取材により、アメリカ合衆国オレゴン州をはじめ1970年代に起きた反核・反原子力運動の隆盛、公共空間の豊かさを支えた当時の重要な政策としてフェアネス・ドクトリンに注目すべき事、そして他方、アメリカの直接民主主義の柱であるイニシャチブがますます商業主義的になり、かつての市民運動の「健全さ」を失いつつある状況を知ることができた。 これらの基礎資料をまとめたものとして、上関原子力発電所及びアメリカ合衆国の原子力発電の歴史年表を、2013年度秋にすいれん舎から刊行予定の『原子力総合年表』に掲載する。バーモントヤンキー原子力発電所については、運転延長許可、事故、州政府の管轄権をめぐる年表をまとめ、嘉悦大学研究論集55巻2号に掲載した。 『原子力総合年表』編集委員として他に「核兵器・反核平和運動」「国際機関・国際条約」の年表作りを担当し、また、福島第一原子力発電所事故以来数多く出版された原子力発電を扱った書籍を通読する内に、日本とアメリカ合衆国それぞれの政策ネットワークだけでなく、むしろ日本とアメリカをつなぐ、あるいは国際的なネットワークに注目すべきではないかと考えるようになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
24年度の主たる目標は、政治的機会構造論と政策ネットワーク論をベースに、原子力政策領域の国レベルの比較可能な分析枠組みを整理することであったが、この整理が十分に出来ていない。 特に国際的なネットワークの存在自体をどのように証明するのか、主要な事実関係を整理すること、ネットワーク分析の手法についての勉学が不足しており、国レベルのネットワークとどう接続するのかが研究上の課題になっているためである。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、24年度にやり残しになっている比較分析の枠組みを理論的に整理すること、国レベルのネットワークと国際的なネットワークとの連関を整理すること、そして原子力発電分野での、政府による原子力産業支援、電力自由化、環境影響評価、安全性確保の4つの政策課題についての年表と主体連関図を完成させることを課題とする。 資料収集を第一義的に考えると、分析枠組みの整理が遅れがちになるため、出来る限り同時並行で進めることをこころがける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
日本及びアメリカ合衆国の公文書館で、必要な資料を収集するための交通費、旅費および資料費に充当する予定である。
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