2013 Fiscal Year Research-status Report
原子力政策決定における公共空間-日・カナダ・アメリカの政策ネットワーク
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24530154
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Research Institution | Kaetsu University |
Principal Investigator |
安田 利枝 嘉悦大学, 経営経済学部, 教授 (50230230)
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Keywords | イニシャチブ / レファレンダム / 州民投票 / 原子力年表 |
Research Abstract |
アメリカ合衆国及びカナダの原子力政策を規定してきた要因を整理するため、カナダとアメリカの原子カ発電開発、電力会社と政府による推進、規制、公聴会、抵抗運動、裁判等の歴史を年表にまとめた。これは2014年6月にすいれん舎から刊行予定の『原子力総合年表』所収の「カナダ年表」「アメリカ年表(共同執筆)」に掲載される。 スリーマイル島事故以来の規制当局による各種規制の厳格さ、公聴会の開催を含む周到な認可手続き、それによる電力会社にとっての原子力発電のコスト高が新規原発の建設・稼働がなされなかった主要因であり、電力会社による諸種の働きかけが効を奏して許認可手続きの簡素化と当初の認可期間を超えての稼働延長の認可が徐々に進んできたことが判明した。また、反原発の抵抗運動の側にとっては、公聴会の開催と州レベルでのレファレンダムやイニシャチブの活用が主たる言論による抵抗運動と闘争の場であり、州民投票による原子力政策を問う試みが繰り返されてきたことも確認した。ただし、アメリカ法における連邦法優位の原則から州法と州政府による原子力発電への規制権限がどこまで可能かが論議を呼んでいる事態がある。原子力に関わる裁判の判例を読みとく必要が生じる。 「公的空間」の分析としては、この州レベルでの原子力にかかわるレファレンダムとイニシャチブの実施状況が焦点の一つである。これについて「研究資料 アメリカ合衆国における原子力発電に関するイニシャチブ及びレファレンダム年表」(2014年3月『嘉悦大学研究論集』通巻104号)にまとめた。イニシャチブの諸制度をもつ州では、投票者パンフレットが州政府によって制作、配布されており、この投票者パンフレットによって明らかになる各種利害関係者の意見、そして利害関係者間のネットワークが、州レベルでの政策ネットワーク分析に極めて有効であることから、今後、投票者パンフレットの分析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
原子力政策を焦点としたエネルギー政策の決定過程における「公共空間を解明することを課題として、社会運動と政策決定過程への公衆参加の法制度を中心に歴史的事実を追いかけてきた。本来であれば政策ネットワーク論、政治的機会構造論等への理論的貢献を目指すべき所、理論的整理に至っていない。 理論的整理が停滞している主たる原因は時間的制約である。2014年度からの学部長職への就任により大学行政を中心になって担わなければならない事態が生じ、かつ今春刊行予定の『原子力総合年表』海外編の各国年表原稿への加筆、訂正、校正作業など編集委員としての業務に多くの時間を割かねばならなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
特定の政策信念をもった政策ネットワーク(「唱道連合」)にとっての政治的機会構造を整理、分析するため、当初の予定よりも一層対象を限定した研究とすべきと考えている。 具体的には、日本とアメリカ合衆国の比較に限定し、カナダを対象から外す。そして、原子力産業支援、環境影響評価、電力自由化、安全性確保という4つの政策課題のうち、電力自由化を扱わないこととする。また、より一層、審議会、パブリック・コメント、公聴会、レファレンダムとイニシャチブという法制度上の公衆参加に焦点を当てた研究とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2014年春に予定していた研究出張を実現できなかったため。 1年間に2回長期の研究出張をすることは困難になっている状況のため、できるだけ関係諸機関、関連団体からデジタル情報、出版物をウエッブでのやり取りや郵送という手段で入手するよう努力する。
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