2015 Fiscal Year Annual Research Report
原子力政策決定における公共空間-日・カナダ・アメリカの政策ネットワーク
Project/Area Number |
24530154
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Research Institution | Kaetsu University |
Principal Investigator |
安田 利枝 嘉悦大学, 経営経済学部, 教授 (50230230)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 原子力政策 / エネルギー政策 / 唱道連合論 / 公共圏 / 電力自由化 / 原子力複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度に、上関原発計画をめぐるアクターのネットワークを探る目的で県及び周辺自治体の図書館で議会資料の収集を、また、住民団体が所蔵する会報・裁判資料の閲覧と関係者への取材を行った。中国電力による最初の地質調査報告の段階から国の電源開発分科会での計画組み入れ決定時に至るまで、公的議論が行われてしかるべき機会、段階でそれがなされなかったこと、そして、反対派の裁判闘争を支えた学者、研究者のネットワーク等を知ることができた。 2012年度来の調査により、オレゴン州トロージャン原発とバーモント州ヤンキー原発の廃炉への決定過程を追跡、前者では州レベルのイニシャチブ、市民運動を支えた公聴会、Fairness Doctrine、Voter’s Pamphlet等の公衆による言論の実質的対等性を保証する法制度の機能を、後者では州知事と州議会の政治的意思の重要性を確認した。 最終的な研究報告書は以下のような概要にする予定である。すなわち、修正した唱道連合理論とH.Kriesiの政治的機会構造論の組み合わせを分析枠組みとする。核エネルギーの商業利用は推進国にとってはエネルギー安全保障のみならず、核拡散を抑止という安全保障上の主柱でもあるがゆえに、原子力政策変更の可能性は少ない。フクシマ事故の悲劇にもかかわらず、規制当局と産業界からなる支配的連合は、政策の目的や内容を変えず、専ら規制基準の一定の厳格化で対応している。しかしながら、他方、電力市場の自由化により原子力産業に対する政府の補助金等の支援や介入をますます必要になっている事態を支配連合自体が認識しており、フクシマ事故後、また相次ぐ大規模地震によりエネルギーシフトを求める世論が高まり、各地の市民・住民運動の広がりがあり、司法判断の揺れも生じている。政策変更を可能にする公的議論の場の拡充と議論の成熟に期待すべきである。
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