2012 Fiscal Year Research-status Report
暴力に抗するラテンアメリカ社会:リージョナル・ガヴァナンス構築の視点から
Project/Area Number |
24530160
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
松下 冽 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (50229465)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 越境型暴力 / 民主主義 / 市民社会 / グローバル化 / 新自由主主義 |
Research Abstract |
本研究の目的は、新自由主義政策の圧力とグローバル化の展開に関わる多様な「暴力」に脅かされているラテンアメリカ諸国が、市民社会と民主主義の防衛・発展・深化を如何にして進められるのか、この点にあった。そして、この課題を分析する視点としてローカル・ガヴァナンスの形成を基盤とし、リージョナル・ガヴァナンスとの連携構築に注目した。 ラテンアメリカにおける越境型の犯罪(テロ、人身売買、違法ドラッグ、武器輸出などの問題群)は地域住民の生活、政治制度、法の支配など民主主義の根底を蝕んでいるのである。 平成24年度はメキシコにおける「暴力」と「犯罪」の現状、またそれらが如何に市民の生活を圧迫し、民主主義と市民社会の発展を阻害し、窒息・萎縮させているのか、またメキシコと米国との深刻な政治的争点となっているのか、これらの論点を取り上げた。とりわけ、メキシコでは越境型の組織犯罪がこの国における最大の国家的課題の一つになっている。これに関する研究成果は「市民社会と民主主義を蝕む越境型暴力──岐路に立つメキシコのガヴァナンス構築の視点から──」(『立命館国際研究』25-3、2013年3月,15-49ページ)で公表した。また、ローカル、リージョナル、グローバルな重層的レベルでのガヴァナンスというより広い視点から問題にアプローチした単著『グローバル・サウスにおける重層的ガヴァナンス構築──参加・民主主義・社会運動──』(ミネルヴァ書房、2012年、全342ページ)を「立命館大学学術図書出版推進プログラム」の支援により公表できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究実績の概要」で述べたように、単著1冊と論文1本を公表することができた。単著は高い評価を受けたのみならず、本研究の課題である「暴力に抗するラテンアメリカの市民社会」にアプローチする基本的視点を提示している。 なお、諸事情によりラテンアメリカへの現地調査が行えなかった点は悔やまれるが、この地域への長年にわたる調査・経験の蓄積が平成24年度の実績に生かすことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、本研究の対象地域(メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、コロンビアなど)における「暴力」と民主主義・市民社会の緊張する対抗関係の実態を現地調査を踏まえて分析する。とくに、グローバル化との関連する越境型暴力に注目したい。もちろん、組織暴力を実行している集団自体の調査は困難であり、また本研究が中心的な課題とするものではない。むしろ、そうした被害者の実態や蝕まれている市民社会の状況と民主主義回復の運動に焦点が当てられよう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年は第1に、メキシコにおける暴力と犯罪が多発する地域、たとえばヌエボ・レオン州やミチョアカン州、南部のオアハカ州、チアパス州の現地調査を行う。これにはメキシコの市民組織、大学研究者の協力を仰ぐ。 第2に、組織暴力の比較の点では、コロンビア・モデルとの比較が議論されている。したがって、次年度の研究費の使用計画としては、現地への調査費(調査の協力者への謝礼を含む)が大きな比重を占める。 第2に、民主主義、市民社会、組織暴力など本研究に関連する資料および基本書の収集を行う。とくにそれぞれのカテゴリーの個別研究ではなく、それぞれの連関性を考察する資料・文献の収集である。
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Research Products
(3 results)