2013 Fiscal Year Research-status Report
東アジア社会主義圏における邦人抑留及びその帰還交渉と国際共産主義運動の検証
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24530181
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
川島 高峰 明治大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10386427)
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Keywords | 国際共産主義運動 / 抑留 / 東アジア社会主義圏 / 強制収容 / 不法出入国 |
Research Abstract |
平成24年に予定していた東アジアの強制収容所に関する研究についてアムネスティ・インターナショナル・ジャパン、ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本と連携することで北朝鮮の強制収容所で政治犯の子供として生まれ育ち韓国に脱出した申東赫(シンドンヒョク)氏に対する公開・非公開のヒアリングを実施した。これにより抑留する側の思想とされた側の意識の分析モデルを得ることができた。 敗戦後の国際共産主義運動、並びに不法出入国の問題と重大な関連を持つ大須事件について、中京地区の地方新聞(名古屋タイムス、中日新聞)及び地域での雑誌・刊行物について調査を実施した。 戦前からソ連への不法出入国ルートとなっていたと考えられる樺太・千島地域について抑留・引揚並びに同地域を経由しての抑留・引揚に関する文献の調査と収集を実施した。敗戦後、元から同地域にいた朝鮮人による日本人に対する組織的な排撃活動が展開した北朝鮮地区と異なり、樺太・千島地区では邦人が入植する以前からにいた現地住民による日本人に対する敵対的な活動は低調であった。このため同地域からの引揚は、満州・北朝鮮地域からのような避難民的な性格は弱く、戦中からの居留地で帰国を待機する性格が強く、ソ連も同地域に対し邦人の自治機構を通じた間接的な占領支配を行った。つまり、強制収容を伴わずに帰国をさせないという抑留もしくは残留の状態となった。また、同地域は北朝鮮・満州・中国と異なり日本本土から見た場合の中間地帯(北朝鮮の韓国、満州の北朝鮮、中国の満州及び日本海と東シナ海)がなく越境が容易であること、敗戦後、ソ連は日本政府が同地域に大量に残留した邦人に食糧等の物資を輸送することを認めたことなどから、抑留・残留継続下においても、日本本土との間で特定少数の人員の往来が行われ、これが国際共産主義運動における不法出入国の手段として利用されたことが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年、初年度の研究実績により申請時に想定していた調査対象について比重の配分の変更(生存者へのヒアリングから文献調査重視)を行ったが、これにより文献収集調査は大幅に進展した。 25年度の計画として予定していた樺太・千島地域の抑留・残留に関する調査について重要な文献を収集することができ、同地域の抑留・残留の構造について概要を把握することができた。 大須事件の詳細な背景・実情について文献調査を行うことができた。 抑留という現象のより原理的なモデルとして東アジアにおける強制収容についての知見を深めるため北朝鮮強制収容所から韓国に逃れた人物のヒアリングをできたことは大きな成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
中国による抑留行為のモデルとして同国における強制収容の事例について文献収集を中心に実施すること。 北九州地区は敗戦後の不法出入国、東アジアからの抑留・残留邦人の主要な引揚ルートの一つであることから、北九州地区に対する調査を実施すること。 抑留は第二次世界大戦後、社会主義圏により日独伊3か国の将兵に行使された公権力による人権侵害であり、これに対する日独伊の帰還交渉と国際社会はどのように対応したのかについて、これを鳥瞰しうる知見を構成すること。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ニューヨーク国連本部ハマーショルダー図書館、もしくは、ジュネーヴ赤十字国際委員会アーカイブスへの渡航調査を予定していたが、先方の開館日等の日程調整の関係で、十分な調査を実施しうる旅程を年度内に組むことができなかったために調査費を繰り越しとした。 調査渡航先の候補機関を、ニューヨーク国連本部ハマーショルダー図書館、ジュネーヴ赤十字国際委員会アーカイブスに加え、国連難民高等弁務官事務所アーカイブスも加えて、日程調整を試みることで、実施可能な旅程の設定の確率を高めるようにし、前記調査機関のいずれかに対する調査を実施する。
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Research Products
(2 results)