2014 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア社会主義圏における邦人抑留及びその帰還交渉と国際共産主義運動の検証
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24530181
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
川島 高峰 明治大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10386427)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際共産主義運動 / 抑留 / 不法出入国 / 東アジア社会主義圏 / 帰還 / 引揚 |
Outline of Annual Research Achievements |
占領期、日本共産党は国交がないソビエト連邦人民共和国並びに中華人民共和国と日本の間での出入国を実現させるために、特別な組織部門「海上区」を設けた。同組織には主に二つの目的があった。第一は、引揚船等、当時、合法的に東アジア社会主義圏と日本の間を往来している船舶の船員を共産党に組織化することで、東アジア社会主義圏との間を合法的に往来する船舶を不法出入国に利用することであった。第二は独自に密航船を仕立て、不法出入国や党活動資金を獲得するために密貿易を実施することであった。 共産党は海上区という機構そのものの存在を否定したが、その他方、海上区は団体等規正令における「暴力主義的方法を是認するような傾向」を持った団体ではないかということが追及された。共産党が非合法化されて以降も海上区の活動は展開された。朝鮮戦争期には、東アジア地域からの抑留者帰還が中止され、日本海側から中国・朝鮮半島方面への航路は軍事的な管理規制が強化されたため密航路等にも利用することが困難となった。このため北海道から北方領土等の千島列島や樺太を経由することによるソビエトへの入国ルートが重視された。 このような非公然・非合法な出入国と並行して、公然・脱法的な活動として展開されたのが、現職の左派国会代議士による不法出入国であった。これは当時の旅券法においては、出国先での渡航地の追加や変更には罰則がないため、インド・北欧等の日本が国交を持つ国へ渡航し、同地を経由国として社会主義圏入りするという方法がとられた。また、代議士には不逮捕特権があったため、このような方法は公然と行使された。朝鮮戦争により停止されていたソ連地区・中共地区からの抑留者の帰還は、このような左派代議士による交渉(「人民外交」などと称された)により行われた。
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