2013 Fiscal Year Research-status Report
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24530189
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Research Institution | Meio University |
Principal Investigator |
高嶺 司 名桜大学, 国際学部, 准教授 (30442495)
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Keywords | 開発援助(ODA)政策 / ベトナム / 日越関係 / 政策決定過程 / 安全保障 |
Research Abstract |
平成25年度は現地調査、文献の収集と分析、および先行研究の考察を中心に研究活動を行った。現地調査のためベトナムのホーチミン市を訪れたほか、文献収集のため国立国会図書館、外務省外交史料館、京都大学東南アジア研究センタ-を含む多数の図書館や公文書館を訪問した。同時に、和洋図書を多数購入し二次資料の分析を積極的に行った。こうして収集した文献を活用して、次の3つの理論的アプローチを考察し、本研究独自の理論的枠組みをほぼ完成させた。 (1) Reactive State Approach(反応的国家アプローチ)K. E. Calder氏によって明確にされたこの反応的国家アプローチは、戦後日本の対外経済政策の形成を「反応国家」というコンセプトを用い説明する。特に、この「反応的国家アプローチ」の支持者たちは、日本の開発援助政策は主に「外圧への反応」であり、また、際政治経済環境の中で、アメリカの戦略目標を助けるためのものであると論じる。 (2) Proactive State Approach(積極的国家アプローチ)一方、D. T. Yasutomo氏は、日本の対外援助政策の決定要因としての外圧の役割を、あまり重要視しない。彼はむしろ、日本の対外援助政策の独立性と積極性を強調する。この「積極的国家アプローチ」によると、国家としての日本は、自らの課題と戦略に基づき、国益を守り、一貫した対外援助政策を作成・遂行する能力を兼ね備えているとのことである。 (3) Institutional Analysis Approach(制度分析アプローチ)開発援助(対外援助)を行う目的、および、その背後にある利益をいったい誰(どの機関や組織)が決定するのか、という問いに答えるのが、D. Arase氏、R. M. Orr Jr.氏、そしてA. Rix氏ら「制度分析アプローチ」の提唱者たちである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展している理由としては、まず第一に、初年度に引き続き研究資料の収集作業が順調にいったことがあげられる。結果として、本研究独自の理論的枠組みをほぼ完成させることができた。第二に、ベトナムのホーチミン市でのフィールドワーク(ODAプロジェクトの視察や現地関係者との面談やインタヴュー)を通して、文献のみでは見えてこない開発援助政策の様々な問題や実状を把握することができた。こうして現地で収集した一次資料は研究の推進に大きく寄与した。最後に、教育への貢献にもふれておきたい。本研究の成果を、名桜大学国際学群で担当の国際政治論や国際関係論の授業において学生にフィードバックすることによって、教育の質的向上に役立てることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、対外援助政策への理論的貢献として、rational actor model (重商現実主義および積極的国家アプローチ)とgovernment politics model(制度分析アプローチ)の理論的隔たりを埋める試みを行いたい。言いかえるとすれば、本研究を通して、日本の対外援助の「政策目的」と「政策決定過程」の関係をより明確にしてみたい。 また、平成26年度は、これまでの研究成果を学会発表や論文として積極的に公開・公刊していきたい。最初の学会発表として、7月にオーストラリアのパース市で行われるオーストラリア・アジア研究学会研究大会(国際学会)での口頭発表がすでに決定している。その後も国内外でも学会発表をいくつか行う予定である。論文としては名桜大学総合研究所紀要への投稿を予定している。その他所属学会の学会誌等へも積極的に投稿していきたい。さらに、著書の出版が可能な場合は出版準備へと取り掛かりたい。もしそれまでの研究だけでは著書の出版が不可能な場合は、以後の研究の方向性を定めることで、著書の出版への展望を明確にしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初ベトナムでの現地調査を2度予定していたが、実際には1度しか実施できなかったことが、当該助成金が生じた主な理由である。平成25年度4月に所属機関の異動があり、新しく赴任した大学での教育活動や学部運営業務等で忙しく、現地調査を予定どうり行うことができなかった。 昨年度に実施できなかった現地調査を行うことで、当該助成金を研究のため効果的に活用していきたい。
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Research Products
(1 results)