2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530201
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
溝口 哲郎 麗澤大学, 経済学部, 准教授 (40566890)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 雅元 麗澤大学, 経済学部, 助教 (80434215)
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Keywords | 腐敗 / 国家統治 / 汚職 / 賄賂 / 移行経済 / 効率性 |
Research Abstract |
平成24年度の腐敗と汚職の事例分析に引き続き,腐敗に関する主観的指標であるトランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗認識指数の具体的利用に関する調査をトランスペアレンシー・ジャパン(TI-J)の協力の下,行った.その調査結果の一部は,フィスマン&ミゲル『悪い奴ほど合理的』(NTT出版)の解説「経済学者たちの腐敗に対する仁義なき戦い」として発表.またTI-Jのシンポジウム「世界から賄賂をなくすための読書会」第二回の「腐敗認識指数」の講義を依頼され,講演した. これらの研究と並行して我々は「発展途上国における権益分配に関するメカニズムの研究」の経済モデルの構築とその精緻化に取り組んだ.具体的には平成24年度より発表している論文Bribery and Efficiency Wageについて,研究会等で複発表を数回行った.このモデルは起業家が新規参入の許可を得るために,取引に関わる官僚に賄賂を支払うという情報の非対称性のある相互取引モデルの設定のもと,効率賃金による賄賂防止効果が効果的であることを比較静学によって分析した論文で,英文査読誌に投稿予定である.また「腐敗・汚職および組織構造を踏まえた寡占市場分析」として,官僚の裁量と賄賂の関係を指摘したShleifer and Vishny (1993)(以下SV)論文の再考を行った.初年度はSV論文の再考とその拡張として,需要サイドの管理・管轄という意味での官僚と民間企業との賄賂に関するモデル構築とその考察を行った.その際,賄賂と社会厚生への影響を踏まえた官僚の目的関数に関する検討と考察を行った.また,平成25年度では,より適切な外生的な官僚の目的関数に関する検討,および内生性を踏まえた目的関数の分析が可能かどうかを検討した.さらに,SV論文流の供給サイドとしての官僚モデルに着目し,モデルの再考と拡張の方針を検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は,平成24年度に引き続き汚職と市場の関係性を分析するために国際的に利用されている統計指標に関する調査を行った.特に腐敗防止の国際NGOであるトランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗の測定ツールである腐敗認識指数の研究利用や実際の取り扱いについて,その日本支部であるトランスペアレンシー・ジャパンの協力のもとで調査を進めることができた.また我々は,引き続き腐敗・汚職の現実を踏まえた経済理論モデルの構築およびその分析のために不可欠な基礎文献を蒐集し,現在構築中の経済モデルをより充実・深化させるために役立てることができた. その具体的な成果としては,「発展途上国における権益分配に関するメカニズムの研究」の精緻化および「腐敗・汚職および組織構造を踏まえた寡占市場分析」の経済モデルの新たな基礎づけとその拡張を行った.前者は平成24年度に発表した論文Bribery and Efficiency Wageを複数回研究会で報告し,英文査読論文への投稿に向けての修正を加えることができた.また後者については,さまざまな基礎文献の検討により新たな方向性を見出した.具体的には,当該財市場における需要サイドの管理・管轄を担う官僚と民間企業との汚職という意味での方向性からモデルの再考を行った.現段階では,外生的な官僚の目的関数に関する検討段階ではあるが,さまざまな文献に当たりながら,独自性を保ちつつ,より説得的なモデル設定を構築する段階に至っている.また新たに,SV流の供給サイドとしての官僚モデルの再考およびモデル構築の方針を固めた段階に入っている.これらの状況を勘案し,我々は研究の達成度について「おおむね順調に進展している」という判断を下した.
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究で行った腐敗・汚職の経済モデルを評価・分析するため,腐敗に関する各種統計指標を用いた実証分析の結果や事例等を用いて考察を深め,モデル分析に反映させる予定である.各種統計調査によって腐敗・汚職が高いと認識されている国々においては,逆に腐敗・汚職行為によって効率性が高まる状況も理論的にありうる.腐敗が効率性を高めるような事例を分析するため,ミクロレベルとマクロレベルでの腐敗の問題を効率性および経済厚生の観点から見直し,どのようなケースで経済厚生が高まるのかを分類し,妥当な政策提言につなげていく予定である. 腐敗・汚職の問題は政府が官僚や企業のタイプについて情報の非対称性が存在することに起因する.そのため官僚制度の効率性,公益事業における規制主体(政府)と被規制主体(企業)の腐敗のインセンティブの問題に焦点を当て,経済厚生を高めるためのメカニズムを構築するための基礎づけを継続して行う予定である.そしてこれまでの研究成果を統合し,賄賂の問題を明示的に取り扱った組織・制度形態についての研究を進める.さらに腐敗・汚職の市場競争面の影響として,供給サイドとしての官僚モデルを取り上げ,そのモデルの構築を進める予定である.そして,官僚の目的とは何かについてもさらに議論を進める.具体的には,外生的に想定した目的だけでなく,賄賂に伴う官僚の目的自体の形成過程,つまり目的関数の内生性についての議論と考察を進める.この分析は寡占分析の枠組みにとどまらず,新たなゲームとしてモデル構築を進める予定である. また引き続き,地下経済と腐敗・汚職の関係についても分析を試みる.地下経済には国家による法的な権限の裏付けが伴わないため,信用保証がないため,腐敗・汚職行為が横行している.そこで本研究では,人々がなぜ地下経済を利用するのか,そのインセンティブの分析と基礎づけを試みる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在,海外査読学術雑誌へ投稿するための論文作成を行っているが,それらの作業が準備段階であるため,今年度分として必要な費用を計上できなかった.また,今年度購入した電子機器の価格が,当初想定していた価格より安価だったために,その分として次年度使用額が生じた.さらに,高額な洋書が中古品で想定した金額より安価に入手できたことによっても次年度使用額が生じた.また,購入予定だった数学ソフト・文書作成ソフトのバージョンに関する検討,および研究者間のクラウド環境を充実させるための電子機器のバージョンに関する再検討を行った.そのため,それらの購入予定金額分を次年度に繰り越すことになった.以上の理由により,本研究計画の次年度使用額が生じることになった. 最新の研究動向や具体的事例,学際的な知識が本研究には欠かせないため,それに見合う十分な書籍代が必要であり,そのための経費を計上している.また,本研究の共同研究のクラウド環境を整えるための電子機器,および共に使用する数理ソフトの環境整備のための費用も計上している.本研究の成果は,国内外でのセミナーや学会発表を予定しており,旅費としてその費用を計上している.また,本研究の成果は査読付き海外学術雑誌への投稿を予定しているため,英文校正の作業も不可欠であり,その費用も引き続き計上している.以上の計画に沿って,適切に利用する予定である.
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] Bribery and Efficiency Wage2013
Author(s)
Tetsuro Mizoguchi
Organizer
SFU-NIESG Workshop on Globalization, International Trade, and Macroeconomic Dynamics
Place of Presentation
Simon Fraser University (Canada)
Year and Date
20131217-20131217
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