2014 Fiscal Year Research-status Report
複数の時間遅延および最適性を考慮した非線形経済動学モデルの分析
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24530202
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
松本 昭夫 中央大学, 経済学部, 教授 (50149473)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Nonlinearity / Implementation delay / Information delay / Heterogeneity / Gradient Method / Bounded Rationality |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はマクロ経済動学モデルとミクロ経済動学モデルにおける遅延の及ぼす効果について理論的および数値的な分析をおこなった。ミクロ動学に関しては、限定合理的な独占者の生産に遅延がある場合の数量調整過程について以下の3つの状況を想定した:(1)複数の生産遅延がある離散時間動学モデル;(2)二つの連続分布遅延がある連続時間動学モデル;(3)勾配法(Gradient Adjustment Method)に固定生産遅延がある場合の連続時間モデル。離散時間モデルに関しては強い非線形性がある場合にカオスが発生することが示された。連続時間モデルに関しては一つの生産遅延では極限循環などの単純なへんどうしか得られないが、二つの遅延を含む場合にはカオスを含む複雑な動学が発生することが示された。 マクロ動学に関しては伝統的なGoodwin(1951)の乗数‐加速度モデルに加速度原理に基づく投資遅延の明示的な導入およびJ.R. Hicksが強調した景気循環における消費遅延の効果を分析するために消費遅延を加え、二つの異なる遅延が持続的かる不規則にへんどうする景気循環を引き起こすことを示した。 これらの結果は、経済動学における「遅延」が重要な影響を及ぼすことを意味していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主な目的は二つあり、(1)複数の時間遅延が経済動学におよぼず影響の考察と(2)動学的最適化モデルにおける遅延の効果分析、である。第一の目的は1次元、2次元の低次元モデルに限定されてはいるが、遅延が一つの場合と遅延が複数の場合とでは質的に異なる動学が生まれることを理論的および数値的に確かめることができた。第二の目的については時間的な制約からまだ初期段階の分析にとどまっているが、いくつかの予備的な考察により複数の遅延を含む最適モデルでも複雑な変動を示しうることが示されている。
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Strategy for Future Research Activity |
一次元、二次元の基本的な経済動学モデルにおける遅延効果の考察にかんしては、解析的な分析方法の確立と数値的な分析により一定の知見が得られたと考えられる。今後の推進方策は少なくとも3つの方向への拡張が考えられる。まず第一に高次元(一般N-次元)モデルにおける遅延効果の分析である。数学的な処理が難しく一般的な展開をするにはまだ時間がかかるが、まずは数値分析等によりその構造分析を考える。第二の方向はファイナンス分野における「遅延効果」の分析である。近年HAMモデルに代表されるような「限定合理性」や「エージェント異質性」などが議論されているが、さらに「遅延」の動学に及ぼす効果の分析はモデルの質的な発展に寄与すると思われる。最後は本研究では初期的な分析ににとどまった、動学的最適化を考慮した非線形遅延モデルの構築が考えられる。
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Causes of Carryover |
2015年3月に開催予定であった非線形経済動学に関する国際会議 (9th International Conference on Nonlinear Economic Dynamics, NED2015)が諸般の事情により、2015年6月に延期されたため、会議用予算として考えていた分を2015年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1) Voler Boehm(Professor, Belefeld University, Germany)の招請費用(旅費15万円、宿泊費5.5万円); 2) Gian-Italo Bischi (Professor, Urbino University, Italy)の招請費用(宿泊費8万円); 3) 上記会議開催にかかわる費用(会議費 70名程度の参加者に対する3日間のコーヒー、茶菓子代等20万)
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Research Products
(9 results)