2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530209
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
小林 磨美 近畿大学, 経済学部, 准教授 (40411566)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 証券化 / 信用リスク / 影の銀行 |
Research Abstract |
現実の金融システムをベースとする基本的なモデルを構築し、観察された事実の説明を試みた。まず、2007年のサブプライム・ローン問題に端を発した金融危機を考察するために、既存の銀行モデルに追加が必要な要素を洗い出した。 多くの既存研究では、商業銀行を想定した銀行のリスク転換機能(リスクのある長期投資に対する資金を、要求払い預金契約の下でリスク負担のない預金者から資金調達する仕組み)をモデル化している。これに対して、欧米を中心とする現代の銀行部門では、「影の銀行」業務でのリスク転換を拡大してきた。「影の銀行」業務とは、SIVと呼ばれる事業体を設立し、それに対してスポンサーになりつつオフバラ化した形で、銀行が金融商品の運用を行うことを指す。運用はリスク調整によって高格付けを付与された証券化金融商品を中心とする。よって銀行部門は証券化を通じて要求払い預金と同等のリスクのない短期負債の需要に応えることができた。以上より、市場性のある証券化金融商品に対して有担保短期負債により資金調達する銀行を想定しモデル化した。 次に、「影の銀行」業務が内包する問題を巡り、既知の事実と残された問題について洗い出し、基本モデルがどの程度の説明力があるかを確認した。先の金融危機では米国の住宅市場の下落によるサブプライム・ローンの債務不履行懸念が、それらのローンを原債権に含み得る証券化金融商品価格の下落を招くとともに、SIVでそれらの証券を運用する銀行への流動性供給の低下を招いたとされている。実際は、それらのローンと無関連な証券価格も下落しており、このことは銀行間と証券市場における流動性枯渇になんらかの連動性があることを示唆している。 分析では銀行間市場における利子変動が証券の流動性に伝播することを確かめ、とくに事前に想定する範囲外での利子率の変動が銀行の信用リスクに影響することを示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
銀行による保有証券の担保化のモデル化を巡り、より一層の工夫が必要であることが明確になった。現在のモデルでは実物投資の担保化との相違が明確でないために、これまでの金融危機で生じた問題とサブプライム問題以降の危機との間にどのような相違があるかを説明しにくい問題がある。また銀行間市場や投資家間での取引などを考慮にいれていないので、説明できる範囲が限定されているという問題が残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
先の金融危機で生じた具体的な問題点を、既存の実証分析を中心として掘り下げる。また銀行をめぐる既存の理論研究を再度サーベイすることで、今回の金融危機分析の位置づけを明確にすることを試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究機関の異動に伴い、新たに購入が必要となったパソコンなどの機器備品を購入する。金融システムのミクロ経済学をベースとした理論研究をめぐる最新の知見を得、議論に参加するために、2014年1月に米国フィラデルフィアで開催される米国金融学会に参加するための旅費に用いる。作成した論文の海外専門誌への投稿料の支払いに用いる。
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