2016 Fiscal Year Annual Research Report
Food Ethics and Utilitarianism
Project/Area Number |
24530214
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
板井 広明 お茶の水女子大学, ジェンダー研究所, 特任講師 (60405032)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 功利主義 / 食の倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
英米日の食にまつわる新たなライフ・スタイルや新たな食の可能性を探る実践を整理するために、今年度は、とりわけ日本とイギリスの状況を視察しつつ、石油や外部に依存せざるを得ない実態、それゆえ完全な地域循環型であることの困難を確認した。同時並行的に、ベンサムの動物論をベースにして、彼の功利主義哲学の特徴からは、のちに「費用の極少化」「適性の最大化」テーゼに繋がる、効率的なシステム経営という統治像が、たとえば、現代におけるリユース、セカンドハーベスト運動につながるような、効率的でありつつエコな制度設計を志向するものであったことを明らかにした。 調査の結果、現代におけるオルタナティヴな食の可能性として、オーガニックに代表される有機農業、自然農法、地域循環型農業があり、それらは大地との共生というテーマを掲げている。全体の割合からすれば、数%にすぎない、それらの運動は、一方で、肥料の外部依存や収入における畜産依存という点で、本研究プロジェクトが依拠する、ある種ヴィーガンを志向する功利主義的な食の倫理とは鋭く対立する側面があった。 一方で、植物性肥料のみで農業を行なうものや、無肥料、無施肥の自然農法などは規範的な食の倫理とも親和性が高いものであったことも判明した。 功利主義的な食の倫理が依拠するベンサム的な動物論においては、苦痛を感じる存在たる動物へ道徳的な配慮をすべしという要請は人間に対する要請と同レベルのものとされていた点で、種差別主義を排する議論であったが、一方で、「期待」という将来への志向性を人間がもつ点で、動物は異なる存在ともされた。 残された課題は、この期待といういわば民法的な領域における人間と動物の区別がいかなる構想に結実するのか、また昨今実用化に向けた動きが顕著になってきた培養肉などの新たなテクノロジーに対して、功利主義的な食の倫理はどう対応すべきなのかである。
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Research Products
(2 results)