2013 Fiscal Year Research-status Report
非定常性に関する統計的逐次検定と変化点探索について
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24530226
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
永井 圭二 横浜国立大学, 国際社会科学研究院, 教授 (50311866)
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Keywords | 統計的逐次解析 / 停止時刻による統計解析 / 非定常時系列 / 分枝過程の臨界性 / 変化点探索 / 確率解析の応用 |
Research Abstract |
本研究では、従属的な確率過程の臨界パラメータ(critical parameter)に関する検定と変化点問題について、停止時刻を用いて推測をおこなう統計的逐次解析の手法を開発する。今年度行った研究は、①1階自己回帰過程(autoregressive process with order 1; AR(1))の非定常性に関する逐次確率比検定および変化点探索、②p階の自己回帰過程(AR(p))の非定常性の逐次検定問題、そして③移民項のある分枝過程(branching process)の臨界性の逐次検定問題と逐次変化点探索、の3つの問題である。これら3つの問題は、研究代表者が指導する横浜国立大学大学院国際社会科学研究科の博士後期課程に属する3名の博士後期課程大学院生の博士号請求論文の一部としてとりまとめられ、平成26年3月に同研究科に提出された。それぞれの博士請求論文執筆者とタイトルは、以下の通りである。①万一青(マン イッセイ, Wan Yijing), "Sequential Change Detection", ②許贇(キョ イン,Yun Xu),"Sequential Unit Root Test for a p-th-order Autoregressive Process," ③王歓(オウ カン,Wang Kang), "Statistical Sequential Analysis of Branching Processes with Immigration." これらの問題を統一的に分析可能にする方法は、ターゲットパラメータに局所対立仮説を想定し連続時間の確率過程の問題に帰着させ、確率解析の理論を応用することである。それにより、過誤確率や期待停止時刻といった動作特性の解析的評価できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
統計的逐次解析における期待停止時刻や過誤確率などの動作特性(OC;Operating Characteristics)を拡散近似を用いて連続時間の統計的逐次解析のフレームワークに帰着させることがこの研究の特徴である。そのさい、確率解析の標準的手法である時間変更によってマルチンゲールをブラウン運動で表現し、Bessel過程で動作特性を評価する。いくつかの場合は特殊関数の数値計算で動作特性が評価可能な場合があることがわかった。従来の非線形更新定理は独立な確率変数列の場合OCを求めるための強力な手法として威力を発揮するが、非独立な確率変数列の場合ほとんど適用不能である。上記大学院生達が実行したシミュレーションを通じて特殊関数による数値計算は十分に満足いく結果であることを確認している。しかしながら、いくつかの場合で動作特性の評価方法が分からない場合がある。それはブラウン運動とそれが作るBessel過程の同時密度関数が分からないことに起因する。たとえばSPRTの期待値はそれらの同時密度関数が分かってはじめて評価が可能になる。また対立仮説が正しい場合に現れるドリフト付きBessel過程の数値計算の方法もまだ困難がいくつかある。 現在までの達成度はこの困難を克服していいない点と得られた結果を審査制ジャーナルに投稿をしていない点でやや遅れているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策の最大のテーマは本研究をHajek-Inagaki-Le Camの理論と統合させることである。課題としては統計的逐次解析としての最適性と局所漸近最適性の両立する理論を構築することである。逐次解析による統計量は、離散時間モデルを連続時間モデルで近似したとき、ブラウン運動や拡散過程の汎関数として表現される。その理論の概要は以下のようなものである。離散時間マルコフ連鎖がある拡散過程で近似されるものとする。また帰無仮説に対する局所対立仮説の尤度比検定が、フィッシャー情報量で停止時刻を定めたとき、局所漸近正規(Local Asymptotic Normality; LAN)になっている場合がある。離散時間過程は仮説ごとに異なる拡散過程に収束するわけであるが、それらの分布は互いに絶対連続で、Girsanov変換を行う指数マルチンゲールがそのRadon=Nikodymの微分となる。それはまた離散時間における尤度比の極限にもなっている。スコアに対する極限をスコア過程、フィッシャー情報量に対する極限をフィッシャー情報量過程と呼ぶと、マルチンゲールであるスコア過程の二次変分がフィッシャー情報量過程となる。そこでフィッシャー情報量過程から作られる停止時刻で時間変更を行うと、問題はDDSブラウン運動で表現されて、LANが成立する場合がある。もとのフィッシャー情報量過程やSPRTはともに時間変更後の新たなブラウン運動のもとで定義される別の拡散過程(いまのところBessel過程だけが現れる)によって表現される。一階の自己回帰過程の極限であるOrnstein=Uhlenbeck過程と、移民項のある分岐過程の極限であるCox=Ross=Ingersoll過程ではどちらも、Bessel過程がそのような拡散過程である。これらの理論をHajek-Inagaki-Le Camの理論と統合する。
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