2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530242
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
井上 健 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (80334001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東田 啓作 関西学院大学, 経済学部, 教授 (10302308)
阿部 高樹 福島大学, 経済経営学類, 教授 (40231956)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 漁業資源管理 / 利他的行動 / 時間選好率 / 伝統的資源管理 / 漁業地区 |
Research Abstract |
過去の調査研究を通じて伝統的な漁業資源管理の方法が有効に機能する事例が確認されているが、そうでない事例も決して少なくない。我々は、このような差異が生まれることに漁業者の「利他的行動」が強く関係していると考えている。集落によって、個々の漁業者の「利他的行動」の発現しやすさに差があり、そのような差が伝統的な資源管理方法の成否に大きく関わっていると考えるのである。本研究は、このような動機にもとづき、集落異質性と漁業者の「利他的行動」との関連性について、経済理論による分析とそれにもとづく統計的な実証分析を行っていくことを目的とする。 本研究が明らかにしようとすることは、① 集落の異質性と利他的行動に関する調査および資料・データの蓄積 ② 集落異質性と漁業者の利他的行動の関連性に関する分析 ③ 伝統的な管理体制の利用可能性に関する分析 の3点である。初年度の平成24年度に実施した内容は以下の3つとなる。1つ目は理論モデルに関する先行研究の整理である。本研究のキーワードとなる「利他的行動」は広い意味で利用しており、将来の自らの利益を考慮して周囲との協調を図るといったものも含むものである。そのような内容を含む研究には協調行動をゲーム理論的に分析したものから主観的な割引率を実験によって推測した実証的なものまで幅広い範囲のものが存在することが明らかになった。2つ目は日本の漁業集落におけるヒヤリング調査である。初年度については、青森県野辺地地区、新潟県佐渡市両津地区・赤泊地区、宮城県山元地区においてヒヤリングを実施し、関連する様々な知見を得ることができた。3つ目はアンケート調査の設計である。理論モデルとヒヤリング調査による知見を参考にしながら、調査項目の設計作業について一定の達成度で実施することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は、①理論モデルに関する先行研究の整理と本研究に合わせた修正モデルの予備的構築、②日本の漁協集落についての調査、③アンケート調査に関する設計 の3つの内容を実施することを予定していた。①については、先行研究の整理については、十分に目標通りに進んだと考えている。一方、本研究に合わせた修正モデルの予備的構築については、複数の選択肢の中から明確に絞り込めていない段階で年度を終えており、達成度としては十分なものであるとは言い難い。明確な絞り込みを行い、修正モデルの予備的構築を2年目の早々に実施しなければならない。②については予定通りに進めることができたと言える。3地域のヒヤリングからは本研究の今後の進展に関する有用な知見が複数得られており、次年度以降の研究を推進することに役立つと考えている。③については、①と②に制約される部分もあり、その範囲内においては、十分な段階まで到達したと言えるが、当初予定していたよりも前の段階で止まっており、次年度の早い段階で進めることが必要となる。
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Strategy for Future Research Activity |
達成度でも記したように、修正モデルの予備的構築作業とアンケートの設計作業について当初よりも遅れている部分があるため、速やかに進めなければならない。修正モデルの予備的構築については、初年度内容と2年目の内容を区分せずに、理論モデルの構築作業として積極的に進めて行くことで本来の予定まで到達することが可能であると考えている。アンケートの設計作業については、理論モデルの構築の進展が進めば同時に進めることが可能であり、やはり、挽回は可能である。 2年目についても引き続き日本の漁協集落についての調査を実施することを予定しているが、前年度に実施した調査から新しい調査地区が複数候補として挙がっており、スケジュール調整を上手く行えば、有用な調査結果が得られると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度については、ヒヤリング調査に関わる旅費部分が想定していたよりも少なかったため、一定の繰り越しが発生した。本研究では漁業地区に関する多様性を重視しているため、広範囲の調査の実施を目標としているとともに、漁業種類や魚種についても広げることを目指している。そのため今年度は日本の様々な地区において、多様な漁業種類・魚種に関する調査の実施を目標としている。そのため、前年度に比べると旅費の支出部分が大きくなると考えている。また、ヒヤリング調査の実施に伴い、データ整理の作業も増えるため、補助作業にかかわる謝金も多くなると予想している。ただし、個別経費の支出額については、当初計画から大きく乖離することがないように努力していく予定である。
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Research Products
(2 results)