2013 Fiscal Year Research-status Report
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24530271
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
松川 勇 武蔵大学, 経済学部, 教授 (50287851)
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Keywords | 経済政策 / 経済理論 / 経済実験 |
Research Abstract |
双方寡占モデルの妥当性を検証するため、排出権市場を想定して経済実験を行った。具体的には、排出権市場を想定した双方寡占のモデルのうち、非競争均衡(non-competitive equilibrium)、share auction、および供給関数均衡の3つに焦点を当て、仮想的な市場取引を通じて得られる実験データをもとに理論仮説の検証を行った。いずれのモデルも双方寡占において内生的な支配力の決定を特徴とするが、理論モデルから予想される均衡価格や均衡取引量において明確な差がみられる。実験では、被験者の取引状況をもとに市場支配力を推定し、理論モデルとの整合性を統計学的な手法によって明らかにした。 実験では、あらかじめ汚染物質の排出を抑制するのに必要な費用に関していくつかのパターンを想定し被験者が排出権の売手あるいは買手になるように想定した。また、排出権の初期保有量について、無料で被験者に排出枠を供与するグランド・ファザリング方式を想定し、供与する排出枠の数量を変えて実験を行った。各ケースについて被験者を変えて数回実験を繰り返すことによって、検証結果の頑健性を保持するとともに、実験経済学においてしばしば用いられるMann-Whitney testおよびWilcoxon signed-rank testなどの検定手法を適用し実験結果の妥当性についても検証を行った。その結果、①限界除去費用関数の傾きが小さいほど市場支配力が高まる、②限界除去費用関数の傾きがすべての取引者で同一の場合、均衡価格は完全競争の水準と一致する、③排出枠の初期配分に応じて市場支配力が変化する、の3点が明らかになった。これらの実験結果は双方寡占の理論モデルと整合しており、内生的な不完全競争モデルの妥当性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度において実施できなかった経済実験を含めて、分析に必要なデータを今年度は十分整備することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では排出権市場に焦点を当て、市場全体の排出枠の合計を一定とし、取引者に対する排出枠の初期配分を変化させることによって、初期配分が取引者の行使する市場支配力へ与える影響を明らかにする。また、限界削減費用関数のパラメータを変化させることによって、削減技術が市場支配力に及ぼす影響を明らかにする。その際、双方寡占の理論モデルに共通する特徴、すなわち売手の市場支配力が強い場合には価格が高騰し、逆に買手の市場支配力が強い場合には価格が低迷する点について、実験データをモデルのシミュレーションから得た理論値と比較することによって分析を行う。さらに、汚染物質の除去費用およびマークアップ率をモデル間で比較することにより、モデルによる効率性および市場支配力の差を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた海外の学会への参加を中止したため、当該項目に関連する旅費が未使用となった。 次年度に参加予定の海外の学会に関連する旅費の一部に使用する。
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Research Products
(2 results)