2013 Fiscal Year Research-status Report
企業活動のグローバル化は非正規雇用の増加に寄与するか
Project/Area Number |
24530273
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
市田 敏啓 早稲田大学, 商学学術院, 准教授 (80398932)
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Keywords | 国際経済学 / 経済理論 / 非正規雇用 / 貿易 / 多国籍企業 |
Research Abstract |
本研究は企業活動のグローバリゼーション化が日本企業の非正規雇用の増加にどのようなメカニズムで関わっているのかを、理論モデルと計量経済モデルの両面からの分析で明らかにしていくことを目的とする。具体的には企業がなぜ正規雇用と非正規雇用の従事者を混ぜて採用するかを、労働者の解雇コストと企業の売り上げの不確実性という観点と、企業における人的資本投資という観点からのトレードオフを用いて説明したい。特に、どのような企業特性が非正規の雇用を増やすのか、たとえば、企業の輸出が増えると非正規雇用比率を上げるのか、それとも下げるのかなどの分析を理論モデルとデータの実証とで検証していきたい。そのほかに、広い意味での企業のグローバリゼーション化(海外子会社の設立やライセンス生産など)が非正規雇用比率にどのような影響を与えるのかを理論、実証ともに検証したい。 以前に全体像をつかむための簡易データ分析を行い、企業の輸出比率と非正規雇用比率との間には逆相関があることを発見した。これは一般に考えられている予想(輸出企業はより大きな売り上げの変動に直面するために非正規雇用の比率を増やして需要の不確実性に備えるだろうという予想から、輸出比率の高い企業は非正規比率も高く、二つの変数の間には正の相関関係があるはず)とは反する結果であった。なぜ正の相関ではなく、負の相関関係があるのかを追求するために、労働経済学の分野から関連のある既存研究を入手して理論的な枠組みで考えることをはじめた。 二つの観点からモデルのセットアップを考えている。一つには解雇コストの存在がボラティリティの高い企業にとって非正規雇用比率を増やすインセンティブを与えるのではないかという考え方である。もう一つには、そもそも正規に人を雇う目的は人的資本投資を行いたいからではないかという視点である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
人的資本投資のモデル化には動学的な要素を盛り込む必要があり、動学モデルの習得に思うよりも時間がとられているため。 また、本研究プロジェクトとは別の特許政策に関するプロジェクトのほうで思いのほか時間のとられる事情があり、理論モデルの構築が遅れているため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度には外部の英文校正サービスなどを用いて25年度に書いた論文に対する推敲をさらに重ねていきたい。その課程で、国内の研究会や海外の学会にて発表を行い、細部のロジックのツメを行っていきたい。26年度の目標としては年度末までに論文を学術誌に投稿することである。 今後、本研究の後のプロジェクトでは、データを用いた分析を開始する予定なので、その際にはデータの入手が可能かどうか、データ分析の結果が予想と異なっていた場合にはどうするのか、などの問題が起こることが考えられる。これらに関しては、本研究期間の間に連携研究者と適宜相談して、対策を練っていきたいと思う。
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