2013 Fiscal Year Research-status Report
ODA・FDIと人的資本形成の途上国におけるMDG改善効果の計量分析
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24530291
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
宇野 公子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (80558106)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 朝夫 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (80159524)
加藤 真紀 横浜国立大学, 研究推進機構, 講師(Lecture) (80517590)
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Keywords | ミレニアム開発目標 / 経済成長分析 / 人的資本形成 / 空間計量分析 / 応用一般均衡 |
Research Abstract |
本研究は,ASEANのような地理的領域を対象にパネルデータを作成し,各国の開発援助対象分野や民間資金の流入等を考慮しつつ,国連ミレニアム開発目標(MDG)の改善に関する多国計量分析を行うことを第1の目的としている。 平成24年度には,アジア太平洋及びアフリカ地域47ヶ国を対象とする予備データベースを作成し,MDGの第1目標である貧困率,第2目標である就学率に関連する計量分析を行った。しかし主たる対象がアジア・アフリカの開発途上国や旧ソ連圏の移行経済であるとしても,比較対象として先進国を含むデータベースが望ましい。また基礎となる世界銀行WDIのデータは欠測が多く,パネル分析等の時間・空間の対応を考慮した手法が望ましいにも拘らず,プーリング分析に留まる等の問題があった。 そこで25年度には欠測データの補間により,150国(地域)の476変数を対象とした1970~2012年の43年間に渡るパネルデータを作成した。これを用いて最終年度は貧困率や就学率に関するパネル分析を行う予定であるが,データ作成と並行して,(1)移行経済圏である西バルカンにおけるFDI流入の地理的分布,(2)南西アジアにおける初等教育と経済成長,(3)高技能労働者に対する市場開放と経済成長等に関する実証分析を進めた。 MDGは2015年が最終年であり,平成25年には国連においてその総括会議が開催される等の動きがあったため,ニューヨーク国連本部とODAを調整する開発援助委員会(OECD)等へ出張し,最新情報の収集に努めた。 本研究は経済成長における人的資本の役割を重視するが,研究者の国際流動と国際的な研究連携が学術研究の効率性に及ぼす影響や,留学生の卒業後の居住国選択に関する研究を行った。またグローバル化に伴う各国経済の同時均衡を表現するため,簡単な空間CGEモデルの枠組みを用いて,要素配置と交通条件の下での交易パターンと空間価格均衡を整合的に表現しうる求解プロセスを提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度のアジア太平洋地域18,アフリカ29の開発途上国のみを対象とし,1990~2009年の20年間と35変数を含む予備データベースは,公表年の不統一に伴う欠測値を多く含むため,多国間の横断面分析も困難であり,プーリング分析のみが可能であった。平成25年度には対象国・対象年次・変数とも大幅に拡大し,時系列補間により欠測値を埋めたデータベースを完成し,予備的なパネル分析に着手した。 前年度に引き続き,国連, 同広報部(UNDPI), 世界銀行,同投資保証機関(MIGA)の担当職員との意見交換と資料収集を実施したが,中でも世界銀行のWDI(World Development Indicators)担当者と欠測データの補間方法に関して意見交換を行ったことは,データベースの完成に向けて有益であった。また本課題の遂行に当ってはOECDとUNESCOの担当官の協力も得ている。前者は先進国からのODAデータを集めており,後者は特に発展途上国におおける教育関連の資料が利用できる。 本課題に基づく成果は,"The Contribution to Economic Growth by Human Capital: The Comparison among BRICs" (2012), "The Effect to the Economic Growth by the Labor Migration: From the Viewpoint of the Stock of the Human Capital" (2013), "Foreign Direct Investment into the Western Balkans: The Statistical Analysis of Determinants in Bilateral Investment" (2014)の3編の論文として,東京外国語大学「国際関係論叢」に掲載されている。また国際学術協力,空間価格均衡に関しても学会・論文等で積極的に発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
アジア太平洋・アフリカの開発途上国を対象とするMDGの政策目標と関連する多国計量分析を継続する。左辺に1人当たり所得を用いたパネル分析を基本とするが,所得増加率や経済成長率,貧困率等を左辺に置くモデルについても検討する。また不完備データや固定・ランダム効果,ラグ変数の扱いを含む多方面の検討を行い,分析技術の向上を図る。対象地域は異なる発展段階の国を含み,ODAやFDIの有効性は国毎に異なると考えられる。発展の初期にはBHN(人間の基本ニーズ)に対するODAが重要だが,経済成長と共に重点は産業・交通基盤整備に移り,スキームも贈与から借款,更には民間部門によるFDIに移行する。そのような空間的・時間的推移を捉える上でパネル分析は有用であるが,具体的な分析の進め方については研究分担者との討議を通じて詰める。 一方,2015年はMDGの最終年に当るため,国連本部では既に2015年以降のMDGに代わる枠組みを検討中であるが,TwitterやFacebook等のE情報の活用によりCensus等の大規模調査(Census等)より迅速な現状分析を実施中と聞く。本課題では,国連・世界銀行のMDG関連部署との協力関係の維持に努めることにより,MDGの総括やそれを踏まえた行動計画に関する情報収集を続けて,よりup-to-dateな分析に心掛ける。 2国経済成長モデルについては,単純な世界政府の将来効用の現在価値(NPV)に関する最適制御問題を考え,数値解析を通じて,モデルに含まれる国別パラメータ(出生率・死亡率・減価償却率・資産分配率)及び共通パラメータ(利子率・主観的割引率)の役割と過渡解の性質について検討する。各サブテーマに関する研究成果については,逐次学会等において発表し,最終的に本課題の研究報告書を取りまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究分担者において,海外調査を含む旅費を最終年度に見込む必要があるが,繰越をしないと所要額の確保が困難であったため。 本年度もニューヨーク国連本部,パリOECD等へ出張し,情報収集と意見交換を予定している。特にMDGの総括や2015年以降の行動計画は,本課題以降の研究の方向性を定める上でも重要である。 本年度は研究最終年度であるため,パネルデータ整備に加えて統計解析のための実務的作業の補助や,論文投稿のための英文校閲等に謝金を見込む必要がある。
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