2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24530297
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
山下 隆之 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (20252158)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 経済政策 / 政策シミュレーション / システム・ダイナミックス / 産業空洞化 / 国内回帰 / 為替変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、(1)円高と対外直接投資の関係を解明して、(2)日本の空洞化の特性を明らかにし、(3)その理論モデルを構築し、(4)空洞化シミュレーション・モデルを開発して、円高対策が国内産業へ与える政策効果を検証した。平成27年度は、(4)のステップを完成へと進め、さらには今後の課題を探ることを目指した。 2015年(平成27年)に入り、製造業が生産拠点を海外から国内に戻す“Reshoring”(国内回帰)という現象が報道されるようになった。この現象は2010年から米国で観測され始め、2014年には英国やドイツでも報道されるようになったものであるが、日本では円安の長期化がもたらした新しい現象である。国内回帰という最新動向をシミュレーションすることで、空洞化が可逆的な現象かどうかを検証できるよう、モデルを改良することとした。 モデル化にあたっては、国内回帰を進めている企業が電気機械産業に集中していることに注目し、日本の製造業を電気機械産業型と輸送機械産業型の2つに分類することとした。前者は対外直接投資と国内投資がトレードオフの形で推移しているのに対して、後者は対外直接投資が国内投資を促進している。国内雇用に与える影響も両者は逆の方向に動いている。この区分をモデル化したところ、産業空洞化シミュレーションの再現精度が向上した。 モデルを、System Dynamics SocietyによるThe 33rd International Conference(2015年7月19日~23日, Cambridge Mass., 米国)にて発表した。先進国共通の“Reshoring”現象の理論的分析を進めたことと、自国通貨高(円高)から自国通貨安(円安)への転換が産業空洞化へ与える影響をコンピュータ・シミュレーションで解明したことに関心が集まり、さらなる研究への期待の声が寄せられた。
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Research Products
(3 results)