2013 Fiscal Year Research-status Report
夫・妻が抱える精神的・肉体的負担への支援策が出生数に及ぼす影響の推定
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24530312
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Research Institution | Heisei International University |
Principal Investigator |
佐藤 晴彦 平成国際大学, 法学部, 教授 (90406588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新島 一彦 平成国際大学, 法学部, 教授 (30383342)
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Keywords | 出産意図 / 不安・ストレス / 政府施策 / 子ども・子育て関連法 |
Research Abstract |
学会発表(佐藤,2013)では、出産意図に与える要因を8つに分けアンケート調査を妻について分析した結果、「経済的負担50%」「不妊の可能性、肉体的負担、出産年齢・子供を持つ年齢23.9%」「心理的負担14.5%」「スペース(部屋)の不十分さ14.3%」「就業の不安定、仕事との調整14.1%」の5要因で有意に不安・ストレスがあること、8要因の属性から見ると、子供数が増えるにつれて、母親の不安・ストレスが大きくなることや子供数がゼロ、1人の時、不安・ストレスが大きくなるのはどの年齢階級でも同様に生じることを示した。また、不安・ストレスは20‐24歳で大きく、年齢が上がるにつれて相対的に小さくなるが、40-44、45-49歳で再び大きくなる。職の形態からは、契約社員、嘱託社員、派遣社員に有意に不安・ストレスが存在する(夫について有意性は見られなかった)ことを報告した。 佐藤(2013a)では、「経済的負担の大きさ」「就業の不安定、仕事との調整の難しさ」に関して、政府施策は進行中であるものの不安・ストレスが大きい。「夫婦・子供のスペース(部屋数)」については施策が進んでおらず、不安・ストレスが依然として大きいことを示した。 佐藤(2013b)では、これらの不安・ストレスが軽減されれば、出産意図をもつようになるため(「そう思う」「ややそう思う」の回答者の合計は約70%にもなる)、不安・ストレス軽減の公的施策が重要視されるべきで、かつ緊急性があることを訴えた。 新島(2013)は、2012年子ども・子育て関連法が可決・成立したが、結婚・出産・子育ての希望がかなわない現状、子ども・子育て支援が質・量ともに不足、子育ての孤立感と負担感の増加等の問題点が存在し、直ちには問題が解決されないことを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間(平成24年~26年度)の研究目的は、出産意図をもつための精神・肉体別の負担軽減について、効果的な支援策ならびにその優先順位を、夫妻別・年齢階級別・地域別に回帰分析することである。 役割分担は、研究責任者(佐藤)が、計画の立案・実行中心、アンケート調査の実施とデータの集計・整理・分析、論文の作成、学会発表とし、分担者(新島)の役割は、子育て支援関連領域からの改善案の検討中心、種々のケース改善方法・地域に符合する支援のあり方の検討、育児施設等に関する各家族・各地域の状況把握等とした。 平成25年度計画は 回帰分析(順序ロジットと限界効果分析)より有意な変数の特定と順位を求めることであり、 回帰分析の流れは、単純集計表、記述統計量、クロス集計表、多重共線性のチェック(相関行列)、順序ロジット分析、限界効果分析の順であった。また、分析の結果、評価できる場合、研究の成果について論文作成し、学会発表することとした。 結果として、研究責任者が研究計画の立案とアンケート調査の実施、データの収集から分析までの結果を出した。それらの結果を基に学会発表、ならびに2つの論文を作成した。 分担者はこれと並行して、子ども・子育て関連法の成立を念頭に置きながら、結婚・出産・子育ての希望がかなわない現状、子ども・子育て支援が質・量ともに不足、子育ての孤立感と負担感の増加等の問題点を指摘し、論文とした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は、夫妻別、年齢階級別に行うことができた。しかし、地域別特性をまだ示していない。 上記で得られた結果が地域別にはどう異なっていくのか、幼児の受け入れの可能性の状況、制度的制約(保育に関する保育園と幼稚園の制度の差)等について、平成26年度、研究する。例えば、出産意図と「夫婦・子供のスペース(部屋数)」に関わる不安・ストレスについては、都心部分と地方の違いを再分析する必要性が生じている。都心部と地方とを区別した研究を引き続き実施する。 さらに、本研究で求めた各々の支援は民間団体レベル、地方自治体レベル、国レベルのどの水準とすべきなのかを考察する。 最後に、どの程度まで出生率をあげることができるのかを、マクロ計量モデル、ならびに、地域ごとの出生率推定方法を作成する。 研究の成果については、学会で発表し、続けて論文の作成と投稿を行う。
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