2014 Fiscal Year Research-status Report
物価に連動する負債に対応した年金ポートフォリオの研究
Project/Area Number |
24530356
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
臼杵 政治 名古屋市立大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (90539058)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 物価上昇率 / 賃金上昇率 / 公的年金制度 / 資産配分 / 下方部分積率 / 平均分散法 / ブートストラップ法 / 代替資産投資 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.インフレ及び賃金上昇率をヘッジするためのポートフォリオ構成を明らかにした。 ・具体的には、ベクトル自己回帰モデル(構造VAR)を用いて、短期資産・株式・債券からなる3資産とインフレ率など複数の状態変数を用いて、投資期間(1四半期~120四半期)による分散共分散構造の変化を明らかにした。また、Miyaoなどの手法によりサンプル期間(1970~2014)中の1994年頃、構造変化があったことを明らかにし、前後に分けて変数間の関係を推定した。その上で、1.平均分散最適化によるリスク(インフレ率や賃金上昇率との共分散)を最小化する最適ポートフォリオ構成、2. 経済変数間の関係を考慮したモンテカルロシミュレーションを用いた、下方分散で測った下方リスクを最小化するポートフォリオ構成を明らかにした。 ・結果として、投資期間が長期にわたり、期待リターン及び共分散構造が前半(1970~1994)のような状況にならないかぎり、資産の大部分が債券及び短期資産に配分されることになった。 ・成果は2015年度の日本保険年金リスク学会で共同発表し、同大会プロシーディングスに掲載される(5月予定)。 2.公的年金基金におけるオルタナティブ投資について、・取引コストなど低流動性がもたらす課題、・上場株式・債券市場のリスクファクタ、ーによる説明可能性、について、先行研究、カナダなど海外年金基金へのヒアリング結果を踏まえた上で、特に日本の公的年金基金において、規模の不経済を念頭においた上でαリターンをあげる工夫が必要であるとした。これらの成果は証券アナリストジャーナル2月号に発表しており、今後5月・11月に報告を行う予定である。 3.今年度は、1.で課題となった外国資産の導入、及び今後の金利上昇を踏まえた、リスク構造の下で、対インフレ・賃金上昇率ヘッジポートフォリオの構成の変改に捨て知見を得ることとする。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究期間中に、1.公的年金の資産運用見直し及び厚生年金と共済年金の一元化、2.企業年金制度改革、が進展した。そのため、審議会・委員会の頻度が増え、審議事項も増加したためその対応に追われてしまった。 しかし、これらの動きが一段落しつつあるので、2014年度に引き続き、2015年度も研究時間を確保しながら、遅れを取り戻しつつある。 1年の延長を認められたので、今年度までの研究期間中に当初の研究目的に適う成果をあげるように努めたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後(最終年度)についても、・Campbell & Viceira(2002)やHoevenaars et.al(2008)を参考にしたベクトル自己回帰モデルによって、物価や賃金上昇率のヘッジとなる資産配分を検証する、これまでの研究を発展させる。具体的には、1.対象資産の拡大、2.誤差項の非正規分布への対応、3.期待リターンの推計(金利上昇局面への対応)、を行いたい。 ・1.は従来の3資産(短期資産・国内株式・国内債券)に加えて、外国株式・外国債券を加える ・2.は、ベクトル自己回帰モデルによる誤差項が多変量正規分布ではない場合の、対応であり、実際の誤差項をランダムに発生させるブートストラップ法(Koniarski et al(2015))をとりいれて、下方部分積率(LPM)を最小化する最適資産配分を明らかにする。 ・3.は、今後の物価の上昇及び金利上昇に対応するものであり、例えば2014年10月末に年金積立金管理運用独立行政法人が発表した、資産の期待リターン(国内債券が一時的にマイナスになる)を利用して最適化を実施する。さらに誤差項については、従来の物価・金利下降局面の数値の符号(正負)を逆にする方法も試みて最適資産配分を検証する。 結果については、当初の方針通り実務家をも対象とする、学術誌に発表したい。
|
Causes of Carryover |
・平成26年度に分析用データベースを購入し、研究・分析・発表を行う予定であったが、公的年金・私的年金の制度改正があったため、公的委員会などの参加に時間がとられたことから研究の進捗に遅れが生じた。予定したデータベース購入をIbbotson社文にとどめたため、研究発表費 用も含めて未使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
・このため、未購入のデータベース(投資信託データベース、Fama-Frenchの3ファクターモデルデータベース及びIbbotsonの リターンデータベース(Enchor))の購入及び発表用経費に充てたい。
|