2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530377
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
玉井 寿樹 近畿大学, 経済学部, 准教授 (00456584)
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Keywords | 財政の維持可能性 / 財政・金融政策 |
Research Abstract |
多くの先進国では財政の維持可能性が危惧されるようになっている。さらに、過大な政府債務の存在が金融市場を通じて、実体経済を不安定化させ、世界経済の先行きを不透明化しつつある。本研究では、こうした状況を踏まえ、財政金融政策が実体経済の経済規模・安定性に与える影響を明らかにするため、理論面を中心に研究を進めてきた。平成25年度は、理論モデルを完成させ、実証分析へとつなげる基礎を確立するため、平成24年度の研究で構築された基本モデルを現実経済の実態により適合した応用モデルへと拡張し、政策効果や理論的メカニズムについての解析を行った。平成24年度の研究成果から、平成25年度では不確実性を伴い経済における財政政策の経済効果についての理論的分析を行った。その中で、生産構造の違いが経済活動全体及び財政政策の有効性に大きな影響を与えることが示された。具体的には、公共部門の活動(財政支出)が民間活動と代替的であればあるほど、平均的に高い経済成長を実現でき、他方で経済成長の速度にばらつきがでやすくなることが示された。この結果は、経済成長の速度と安定性にはトレードオフの関係があることを示唆している。平均的な経済成長を促進するためには、ある程度の不安定性を許容せねばならないという政策的示唆は、現実の公共部門の活動に重要な問題提起をしているといえる。これらの研究成果は論文「The macroeconomic effects of fiscal policy in a stochastically growing economy」としてまとめられ、研究集会での報告を経て、学術誌へと掲載されるに至っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、理論モデルの構築は進んでおり、一定の条件下での経済活動・安定性への効果の検証に成功している。また、拡張モデルによる成果も期待されており、概ね予定された研究成果を実現していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、平成24~25年度での研究成果に基づき構築された基礎的理論を発展させていくとともに、政策効果の実証分析を進めていくことになる。既存の研究によれば、金融市場を加味していない状況下で、財政が維持可能な条件及び経済の安定条件が示されているが、これらの条件を現実的な金融市場の下での安定条件として拡張していきたい。また、規範的な意味で市場経済が安定化するための現実的な条件を提示し、実証的にそれを検証していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
論文の改定に伴う英文校閲費の支払いを予定していたが、論文再審査過程において追加改定の要求があり、改定作業の次年度へ延長の必要性が生じ、その分の金額を次年度へと持ち越すこととなった。 次年度早々にも作業完了が見込まれ、当初予定通り英文校閲費の支出へと充当する予定である。
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