2013 Fiscal Year Research-status Report
産業集積地再生におけるセクター連結型企業家―陶磁器産地有田の事例研究―
Project/Area Number |
24530438
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
山田 雄久 近畿大学, 経営学部, 教授 (10243148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市川 文彦 関西学院大学, 経済学部, 教授 (00203092)
東郷 寛 近畿大学, 経営学部, 准教授 (10469249)
吉田 忠彦 近畿大学, 経営学部, 教授 (20210700)
山本 長次 佐賀大学, 経済学部, 准教授 (70264140)
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Keywords | 伝統産業 / 市場戦略 / 地域経営 / 非営利組織 / 企業者活動 / 業界団体 |
Research Abstract |
産業集積地の再生をテーマとする本研究では、佐賀県有田町における企業者活動の事例から、陶磁器産地における製造業者ならびに商業者の同業者団体の動向を中心に、地域経営の組織展開に関する分析を行った。昨年度に引き続き、産地を代表する企業家や経営者に対するインタビューを実施することにより、現代の伝統産業地域における活性化策の具体的事例の成果と課題について明らかにする一方、産地内の中小企業に対する支援組織として機能した大有田焼振興協同組合の役割、そして組合解散に至る過程について検討を実施した。これらの研究成果については、非営利法人研究学会全国大会において研究報告を行い、多くの研究者から非常に重要なコメントと示唆を頂くことに成功し、それらの報告内容をふまえて、本研究の中間報告書の作成準備に取りかかった。 2013年9月に佐賀県知事ならびに県庁商工課が発表した佐賀県による有田焼400年事業に加え、2014年3月より本格的に始動した日本磁器発祥・有田焼創業400年事業についても同時に検討を進めることにより、産地再生への取り組みとして試みられた海外市場に対する新しい有田焼製品の輸出拡大策、さらには国内販路拡大に向けた有田町による市場拡大戦略の内容が明らかとなった。これらの販売策をめぐって、産地内で進められる製品開発とブランド構築に向けた取り組みが、産地内の代表的メーカーである香蘭社や深川製磁、さらには中小の窯元や商社によって現在進行形の状態で具体的に実現しつつあり、これら伝統産業の活性化が地域の雇用確保ならびに企業存続へとつながる動きを見せている現状について分析を加えることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も昨年に引き続き、総計30名に上る関係者へのヒアリング調査を実施することにより、伝統産業地域における企業家の役割、ならびにまちづくりに関わる産業と地域経済における活動の具体的内容を明らかにし、21世紀に入って伝統産業に求められる海外市場での商品開発の進展、さらにそれらの動向を左右する県庁の産業政策と民間企業の新しい戦略について検証を行った。産地をリードする企業家の多くが業界全体に対して影響を与えながら、行政による新技術開発の動きにも呼応する形で、産地全体の再生に向けた地道な取り組みを進めている現状に関して一定の評価を与える事が可能な状況が上記の作業からも如実に窺われた。 企業家の新たな活動をサポートする各種事業が現在も佐賀県によって次々と推進されており、2013年に入って有田焼400年事業が本格的に始動することで、今後の有田焼産地における明るい兆しがようやく見え始めたと考えられる。これまでの数回に及ぶ現地調査と継続的なアクションリサーチに基づき、業界組織の変質、さらには産業観光や歴史的文化事業などの、新規事業テーマへの拡充にともなう成熟期の新しいまちづくりに関しても、現地の関係者より多大なる協力を得ることで着実に事例研究を重ねることができた。本年度の作業を継承する形で、次年度においても伝統産業の生き残り戦略、ならびにグローバル化にともなうクールジャパン関連事業に関する組織内部での意思決定プロセスについて、具体的な事例研究に基づく追跡調査を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度に向けて、本年度に実施したヒアリング調査の録音内容を反訳することで基礎的な調査資料の整理を実施し、有田焼産地における事業システムのフレームワーク抽出に全力を注ぐ。上記の資料論文をもとに、研究成果を中間報告書の形にまとめ上げ、現状の産業再生における問題点と、伝統産業地域における企業家の役割に関して検証を加えることで、本研究における最新の成果報告書を至急作成し、有田焼産地の関係者ならびに、経済産業省に関わる事業主体をはじめ、中央官庁レベルでの伝統産業再生に関わる方々に対する情報提供をあわせて実施して行く予定である。 また、地域の組織や人物の内面にまで踏み込んだアクションリサーチに基づき、マルチセクター・パートナーシップを発揮する企業家の存在を具体的に指摘するとともに、伝統産地内のシステム再構築に向けた提言、そして地元関係団体(有田商工会議所・有田観光協会・有田町役場ほか)の方々との積極的な情報交換を今後も引き続き実施する。NPO法人有田町どっとこむにおける海外市場開拓事業の試み、さらには有田商工会議所におけるICT事業の新展開などの事例を追跡調査することで、若手企業家を中心とした新しい伝統産業を創出するための事業展開の可能性とその是非について検討作業を進める。 とりわけ、非営利組織として存在するNPOや社団法人などの関連団体、協同組合や商工会議所などの地元産業推進団体などの役割の重要性について再確認し、現代の地域社会と伝統産業とをつなぐ組織や企業家のあり方に関して検証することで、今後の地域社会における事業システムの将来性に関しても評価を加え、地元関係者との対話に基づく新たなまちづくりの可能性に関して、具体的事例に基づき研究内容の充実化を図りたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究分担者による共同研究上の出張経費を可能な限り削減することで、その捻出分を共同研究に関わる調査資料作成ならびに報告書作成に利用するための物品購入に充当することが可能となった。引き続き、現地調査で必要となる物品の購入資金として計上することにより、九州地方、とりわけ佐賀県という特定地域をフィールドとする共同研究・調査において、現地での資料作成と現地調査地域における予備調査の遂行を円滑に進めるための必要経費として充当したく考える。 研究分担者が所属する佐賀大学の予算として執行することにより、有田町における調査・研究経費として計上する予定である。佐賀大学では2016年度より有田キャンパスの開設することが正式決定しており、本研究では、引き続き佐賀大学における調査研究をも積極的に遂行することが期待される。研究分担者が所属する佐賀大学地域経済研究センターとの連携も視野に入れながら、次年度における本研究の共同研究作業をさらに発展させていく予定であり、調査資料に関わる物品購入と関連経費として研究費を使用する計画を策定する。
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Research Products
(4 results)