2013 Fiscal Year Research-status Report
日本企業の合併・買収(M&A)意思決定プロセス研究
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24530476
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
清水 勝彦 慶應義塾大学, 経営管理研究科, 教授 (50579935)
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Keywords | クロスボーダーM&A / M&A / 日本企業の海外進出 / behavioral theory |
Research Abstract |
本年度は、前年度に引き続き日本企業の国際化(特にアジア新興国への進出)に関連づけて、その文脈からM&Aを考察した。2013年7月に行われたThe Association of Japanese Business Studiesの学会(イスタンブール)で発表された論文に、追加インタビュー、学会での海外研究者との討議等さらに手を加え、よりレベルの高い国際学会(Academy of International Business)に投稿した結果、見事アクセプトされた。2014年6月にバンクーバーで発表を行うことが決定している。 一方で、日本企業のM&Aをテーマとして研究をつづけ、行動理論的な視点から実証論文としてまとめたHOW DO FIRMS LEARN FROM THE FAILURE OF AN ACQUISITION ATTEMPT? TOWARD A BEHAVIORAL LEARNING THEORYを経営学最大の国際学会である2014年に開かれるAcademy of Managementに投稿したが、残念ながらアクセプトされなかった。論理面、データ面でさらなる努力、検証が必要だというレビュアーの指摘を真摯に受けとめ、本研究の最終年になる2014年度には3か年のひとまずのまとめにふさわしい高い研究成果としてぜひ国際学会で発表できるようにしたいと考えている。 最後に、行動理論と関連した新たなプロジェクトとして、M&Aと環境の不確実性、及び経営者の性向を関連した実証研究に2013年度後半より取り掛かっている。現段階ではまたデータ収集の途中であるが、経営者の性向を反映していると思われる収集できる外部データを集め、そうした経営者の性向がM&Aの意思決定にどのように関係するかを論文としてまとめ、国際学会に投稿・発表を行いたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、実務家を中心とした定性的なインタビューをもとにM&Aの意思決定のプロセスを考察することを主テーマとしたが、そうした定性的なインタビューを学問的な論文として構築することが大変困難であることがよりはっきりしてきた。従って、インタビューは引く続き行うものの、それ自体を主データとするのではなく、学会の主流である定量的な分析に落とし込めるように方向の転換を行っている。 海外進出の視点からまとめた論文は当初の予定以上にうまく進み、また一流の国際学会でも発表する機会を得、今後一流の学会誌での出版を射程に入れることができている。一方、M&Aを中心とした論文は現段階ではAcademy of Management で却下され、苦戦している。一つはデータの収集に苦労しているという点があるが、もう一つは「斬新な切り口」という点を見つけるのに時間がかかり、論文への反映が十分でなかったことがあげられると思う。もはや「日本企業」というだけでは国際的な経営学会ではあまり評価を受けず、むしろM&Aのデータベースが今一つしっかりしていないところがやや遅れてしまった原因として大きいと分析している。従って、収集可能なデータの「質」の見極めをより現実的に行い、ターゲットとする学会、アウトレットを検討する必要があると感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの試行錯誤からたどり着いた「行動学的(behavioral)な視点」 および「不確実性の環境下での意思決定」という点をより深掘りし、これまでのM&A論文にない切り口から、より斬新な貢献度の高い論文に、完成度をあげていく予定である。 特に、本年度は3年間の最終年であることも踏まえ(1)HOW DO FIRMS LEARN FROM THE FAILURE OF AN ACQUISITION ATTEMPT? TOWARD A BEHAVIORAL LEARNING THEORYについては、理論、データ両面からリバイズを徹底的に行い少なくともAcademy of Managementではアクセプトされることを目指す。(2)不確実性、経営者の性向、及びM&Aに関する論文を仕上げ、一流国際学会で発表を目指す、(3)そのために、国際学会への参加および議論により積極的に取り組むようにしたい。 なお、今回の科研費は本年で終了であるが、研究の終了では全くないことをかんがみ、上記(1)~(3)だけでなく、今後につながる研究のアイデアの醸成にも努めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
求めるべきデータの確定に時間がかかり、その分データ収集に予定されていた物件費並びに人件費を本格的に使用するには至らなかった。一方で、国際学会のコストが若干過小評価されていた。 本年は既述したように、これまでの遅れを取り戻すべく2本の論文のデータ収集を完成させたうえでの論文化、並びに国際学会での発表を目標としている。従って、データ収集にかかわるコスト及び学会出張にかかわるコストが前年よりも大きく増えると思われる。また、今後の研究につながる何がしかのきっかけもつかみたいと考えている。限られた資金をうまく利用して、最大限の結果が得られるよう努力したい。
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Research Products
(3 results)