2012 Fiscal Year Research-status Report
新興国における部品・材料企業の戦略・組織に関する調査・研究
Project/Area Number |
24530498
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
伊藤 誠悟 関東学院大学, 経済学部, 講師 (80612275)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 自動車部品 / 調達現地化 / 新興国調査 |
Research Abstract |
本研究は、自動車産業の部品生産・流通システム変化の動向と、その変化に伴う部品・材料の開発プロセスに及ぼす影響を明らかにすることを狙ったものである。 まず、産業構造を定量的に把握するために自動車部品の生産状況を集計している調査資料を整理し、経時的な分析を開始した。分析の視点は、自動車の環境規制等の強化によるサプライヤーシステムの垂直統合度の変化や海外生産の拡大によるサプライヤーの国内生産量の変化である。 また、海外の現地調査に先立ち、先行調査で渡航したインドの状況を整理し、新興国での国際分業のあり方を自動車部品サプライヤーの本社部門と議論を行った。並行して、関東学院大学が東京大学ものづくり経営研究センター、早稲田大学日本自動車部品産業研究所と運営している自動車サプライヤーシステム研究会と連携し、2次サプライヤーの海外進出状況の調査も行っている。 海外の現地調査では、前年度のインドの実態調査をもとに今年度は日系サプライヤーの海外進出でより歴史のあるインドネシアの現地調査を実施した。インド、インドネシア及び中国の調査を通じ戦略上の課題として認識されたのは深層レベルでの部材の現地調達化であった。インド、インドネシア、中国では表層的に現地調達が進んでいるが、調達先を聞き取り調査すると、重要な部材や複雑な部材は日本からの輸入品が多く、完成品である自動車のコスト競争力にマイナスの影響をもたらしている。どの部材をどの時期までにどのレベルで現地調達化を達成するかは、日系自動車メーカー及び自動車部品サプライヤーにとって重要な問題であるが、まだ明確なビジョン、もしくは方策がないことがわかってきた。次年度以降、深堀する研究の視点であると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新興国の現地の実態は、前年度に先行して調査を行ったインドの他、インドネシア及び中国に渡航し調査したことにより把握できつつある。日程の制約や調査対象先の都合もあり企業リストの中には訪問できなかった企業もあるが、主要な日系企業の現地拠点の経営者や現場責任者と予定通りディスカッションができており、現地化の実態の理解とより踏み込んだ視点での開発分業に関する調査は着実に進展している。 韓国のサプライヤーとの比較については、各国の日系サプライヤーの拠点経営者に動向や技術レベル、戦略、組織体制など適宜聞き取りを行うことで情報を収集している。また、韓国自動車メーカーのサプライヤーマネジメントに関しては、現代自動車の戦略・組織を継続的に研究している研究者と意見交換を行い、現代自動車と日本企業との戦略・組織体制の違いについての理解を深めつつある。 本社と新興国の現地拠点との開発分業は、拠点の独自方針よりも本社の政策の方が大きく影響する。そのためグローバルでの開発分業やソーシングのあり方については、複数の部品サプライヤーの本社戦略スタッフと議論をしている最中である。次年度以降も、実務家との議論を重ね新興国との機能分担について更なる検討を行う。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の新興国海外調査は、9月にタイの自動車メーカー及び自動車部品の日系サプライヤーを中心に実施する予定である。新興国で事業を展開する日系サプライヤーをできるだけ多く訪問し、自動車メーカーや本社との開発分業の現状を把握し、分業を高度化させる上での課題を明らかにする。日本を代表する自動車部品サプライヤーであり、既に北米、インド、インドネシア、中国の現地調査を実施したことのある株式会社デンソーが当面の訪問調査の中核となる。既に訪問を打診しており、日程調整中である。 タイ以外にも2月か3月に新興国の中で自動車産業の成長が著しい地域を選び、サプライヤーシステムの比較調査をする予定である。 更に当該年度はサプライヤーシステムの研究者との意見交換を積極的に展開する。加えて国内の2次部品メーカーにも訪問し、グローバル展開の方針や課題を聞き取り調査し、問題点を整理する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も引き続き新興国の現地調査を実施する。まず、9月にタイの自動車関連企業を訪問し、調査する予定である。3月にも新興国の渡航調査を予定している。また、当該年度は国内での研究者との議論や、2次サプライヤーの定性調査を積極的に展開する予定である。そのため、国内外の出張費の使用を多く見込んでいる。 上記以外に、日本のサプライヤーシステムの構造変化を定量的に把握するため、自動車部品生産に関する調査資料を活用し経時的なデータの入力作業を昨年度に引き続き行う。そのため、資料の購入費とデータ入力作業費用を見込んでいる。 その他に昨年度に調査したインド市場に関し、インド自動車産業の変化について調査項目を指定し調査会社に依頼する予定である。インドは最終年度に再度調査に渡航することを予定している。
|
Research Products
(6 results)