2013 Fiscal Year Research-status Report
被災中小企業再生「疑似エクィティ投資ファンド」の現状と新たな可能性を探る
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24530501
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
玉井 由樹 愛知淑徳大学, ビジネス学部, 助教 (50547362)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西澤 昭夫 東洋大学, 経営学部, 教授 (80257435)
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Keywords | 疑似エクイティ投資ファンド / クラウドファンディング / 被災地中小企業 / 東日本大震災 / ベンチャー / エンジェル投資家 / ベンチャーキャピタル / エクイティギャップ |
Research Abstract |
未曾有の被害をもたらした2011年3月の東日本大震災から3年が経過した。被災地では災害廃棄物などの処理は進んだものの、産業の復旧、復興に関してはいまだ道のりは険しい。震災前の状況を100とすると、東北の地場産業である水産・食品加工業は14%、卸小売り、サービス業は30%程度の回復しか進んでいない。また、被災3県(福島県・宮城県・岩手県)では震災後、人口流出の状況が生じており、工場や設備を再建できたとしても、新たな販路開拓や業態変化に迫られている。他方で、政府は被災地応援ファンドを含めたクラウドファンディングに関し、2014年3月に株式型のクラウドファンディングの解禁を閣議決定した。これにより、日本ではこれまで実施不可能であった株式型クラウドファンディングによる資金調達が可能となる見込みとなる。 そのような状況の中、2013年度は昨年に引き続き匿名組合を利用し、被災地中小企業へ投資を行う被災応援ファンドの仕組み、法律規定、被災地中小企業の資金調達後の現状、変化、出資者の出資目的などについての実態調査を進めた。その結果、被災地中小企業の多くが復興への道半ばである中、被災地応援ファンドを利用した企業はいち早く資金調達を行ったため、工場等の再建をより早く果たしただけではなく、出資者、ファンド運営会社と協力しながら業態変化や販路開拓、新商品開発などを行う新たな展開をおこなっていることが明らかとなった。さらに、出資者へのインタビュー調査も複数回実施した。これにより、投資型クラウドファンディングにおけるクラウドの特徴を把握しつつあり、これは株式型クラウドファンディングの解禁に向け、新たな知見の提供を資すると考える。また、出資者と企業とを仲介する、ファンド運営会社の役割についても調査し、仲介機関の役割の究明も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の中心課題は、初年度のフィールドワークを踏まえ、投資者が「疑似エクィティ投資ファンド」に出資を決定するプロセスや出資目的、出資に対する評価及び投資先企業の評価をおこなうことであった。4回のヒアリング調査を実施し、多くのデータを収集することができた。同時に、被災地中小企業へもインタビュー調査を実施し、疑似エクイティ投資ファンドを通じた資金調達が企業に与えた影響についても調査を実施することができた。さらに、投資家と被災地中小企業をつなぐ、仲介機関の役割についても仲介機関が実施するファンミーティングに複数回参加することで調査を行った。 また、「疑似エクィティ投資ファンド」が被災地域の中小企業の再生だけでなく、今後のわが国における創業期ベンチャー企業の新たな資金供給制度となるための可能性やその条件を究明するため、先行する英国事例への調査も実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年となることから、「疑似エクィティ投資ファンド」が被災地中小企業の再生にいかなる貢献をしたかについて、総括的な分析・評価を行う。具体的には、本研究において分析対象とされた、(1)疑似エクイティファンドによる資金調達が被災地中小企業に与えた影響、(2)「疑似エクィティ投資ファンド」の出資者の出資プロセス、出資目的、投資先企業の評価ポイントの解明、(3)疑似エクイティ投資ファンドにおける仲介機関の役割の解明の3点に焦点を当て、これまでの成果を共有し、その成果をまとめ、研究成果の発表を行っていく予定である。さらに、それらを報告書として纏めることをめざし、国内外の研究者や実務家などとの意見交換を行い、疑似エクィティ投資ファンドがわが国の創業期ベンチャー企業によるエクィティを通じた資金調達に貢献しえる金融イノベーションとなるための可能性や条件を具体的に提起したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究者2名で英国調査を行う予定であったが、1名しか行うことができなかったため。 次年度においては、繰越が生じた分に関しては海外調査を行い、次年度予算に関しては最終成果発表のための旅費や成果報告書作成のために使用する予定である。
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Research Products
(2 results)