2014 Fiscal Year Annual Research Report
中国消費者の日系ブランドに対する言説と行為の乖離の解明
Project/Area Number |
24530520
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
古川 一郎 一橋大学, 商学研究科, 教授 (60209161)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 面子 / 言説と行為の乖離 / ブランド / 中国人消費者 / 場のプレッシャー / ネットワークの類型 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、「嫌いだけど買う」という、言説と行為の矛盾を説明する論理的フレームを構築することである。分析対象としたデータは、主として中国消費者の日系ブランドに対する言説と行為(態度)のデータであるが、研究最終年度である2014年度においては、これまでの研究の成果を振り返り、不足しているデータを補いつつ、得られた結論の整理を行うとともに新たな課題について検討を行った。データの分析から得られた結論は以下のとおりである。 (1)嫌いだけど買うという言説と行為の矛盾は、反日という社会規範が引き起こしている。(2)しかし実際は、中国消費者は日系ブランドが好きだから購入しており、言説と行為の矛盾にほとんど無自覚である。(3)人々の対話は、社会規範の影響を受けている。この社会規範は対人関係の性質により大きく異なり、したがって対話の内容は相手により大きく異なる。「面子」という中国社会の規範の影響が大きく作用するとき、常に相手によって対話の内容が変わる。(4)一般的にどの社会においても、消費者の不確実性下の選択行動は社会規範・文化の強い影響を受けている。(5)マーケティング・リサーチの手法でこの理由を確認するのは難しい。それは、人間関係は非公開であり、観察者自身が異質の社会規範の影響を受けているからである。(6)グローバル市場における消費者行動を理解するためには、異文化における社会規範と対人関係の関連構造を理解する必要がある。 残された課題は、社会規範の変容のダイナミックな側面である。反日は比較的最近形成された社会的規範であり、政策的に作られた側面が強い。この点については、文化の継承メカニズムや実験経済学の知見などから更なる考察と検討が必要になろう。 追加データに基づく分析については、2014年6月のマーケティング・サイエンス学会において報告を行った。
|
Research Products
(1 results)