2012 Fiscal Year Research-status Report
企業価値の評価と創造の日欧比較-日英仏独の企業を対象として-
Project/Area Number |
24530580
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
青淵 正幸 立教大学, 経営学部, 准教授 (00290130)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清松 敏雄 多摩大学, 経営情報学部, 准教授 (40623541)
青木 茂男 茨城キリスト教大学, 経営学部, 教授 (50129061)
中嶋 教夫 明星大学, 経営学部, 准教授 (90409425)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 国際情報交換 / ドイツ:イギリス:フランス / 財務特性 / 企業価値評価 / 利益調整 |
Research Abstract |
平成24年度は研究初年度であり、基礎的な研究を行う年度として位置づけられている。当年度は企業価値の測定に関する諸問題の整理、欧州企業における企業観の整理、欧州企業における利益調整行動の確認、の3点を目標に研究を進めた。 研究代表者の青淵はわが国の在庫戦略と企業価値の関係について研究した。わが国では在庫を持たない戦略の企業が多いが、有事には物流が停止し、企業活動が停止して業績に影響する。東日本大震災の前後で比較した結果、わが国の製造業では在庫が増加し、営業キャッシュフローが減少する傾向にあった。ただ、統計上の問題が残され、欧州企業を評価する際には検討を要することを確認した。 研究分担者の青木は企業価値評価に関する既存研究の洗い出しに加え、日米欧の製造業における財務特性の比較を行った。その結果、日本企業は収益性が低いこと、内部留保が厚く自己資本比率が高いこと、設備投資意欲が低いことなどの特性を明らかにした。 研究分担者の中嶋はフランス企業の評価に先立ち、国外企業がフランスに進出する際の要点、国外企業が国内企業を買収する際のポイントを明らかにした上で、フランスの企業を評価する際には単純に数式を用いた企業価値評価ではなく、カントリーリスクやコミューンの存在を如何に勘案するかが重要であるとの結論に達した。 研究分担者の清松は利益調整行動に関する比較を行う。研究対象の欧州3カ国にはそれぞれ証券取引所が存在するが、清松は主としてロンドン市場におけるIPO時の利益調整行動に焦点をあてている。ロンドン市場のIPOおよび利益調整行動を研究する準備として、わが国のジャスダック証券取引所へ新規に上場した企業の報告利益管理の要因を分析した。その結果、わが国では創業者や役員等の持ち株比率と裁量的発生高には有意な関係がなく、経常増益という黙示的な要因が裁量行動に関係していることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々の研究の最終的な到達目標は、欧州企業の企業価値を測定し、日本のそれとの比較を行うことである。その目的の達成のため、平成24年度は企業価値の測定に関する諸問題の整理、欧州企業における企業観の整理、および欧州企業における利益調整行動の確認の3点を目標に掲げた。 企業価値の測定は青木を中心に研究が進められた。青木は長年にわたって企業価値測定の研究を継続しており、測定モデルのもつ曖昧さなど、これまでの研究成果の洗い出しと整理を行った。欧州の企業観は青淵と中嶋が中心となって進めた。株主との関係性が強い米国企業とは異なり、欧州企業はコミュニティとの関係性が強いことを確認した。利益調整は清松が進めた。企業における利益調整行動の研究は清松のライフワークでもあり、報告利益管理の要因分析を行った。 以上の成果は、一部は学会での報告や、機関誌あるいは研究紀要に論文として掲載(掲載予定)されており、残りは平成25年度の業績となる予定である。以上により、研究に関する現在までの達成度は、「おおむね順調に進展している」と評価する。 ただ、研究初年度である平成24年度は、当初予定していた月1~2度の頻度での研究会を行うことが困難であった。計画当初は隔週土曜日の午後を研究会に充てる予定であったが、各研究者が所属する研究機関での諸行事や会議等のため、研究会の日程調整が難航したためである。そのため、研究成果の報告や意見交換はメールベースで行うこととなり、一堂に会した研究会は2カ月に1度程度となってしまった。各研究者による研究がおおよそ計画通りに進んだものの、研究会の頻度が低下したことは、研究代表者として大いに反省すべきである。幸いなことに、平成25年度は月に1~2度の頻度で研究会を行うことが可能との見込みであり、研究の進捗管理が前年に比べて容易になると期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は欧州3カ国での文献研究およびヒアリング調査を実施し、平成26年度は研究成果を整理する年度となる。平成25年度は、4月から7月にかけて前年度の研究を振り返りつつ、訪問先での研究・調査内容の準備と最終確認を行う。そのために、1カ月に1~2回の研究会を行う。8月後半には約10日間の日程で欧州の3カ国を訪問する。帰国後は会計学や経営学分野の学会への参加等を通じて他の研究者との意見交換を実施し、それも加味した上で研究成果の整理を進める。研究会は引き続き1カ月に1~2回実施し、研究代表者、研究分担者相互に研究の進捗度を確認する。 ドイツの訪問では、自動車産業、ビール産業および中小企業の視察と評価方法の検討を予定している。自動車産業およびビール産業はわが国でも経済を牽引する産業であり、日独の比較可能性を有していると考えられる。また、青木による平成24年度の研究成果により、欧州の上場企業は日米と比較して相対的に数が少なく、財務構造も異なっていることが明らかであり、その実態を視察する。ドイツの中小企業の検討は主として青淵が行う。 イギリスの訪問では、株式の新規公開(IPO)やライツ・イシューの調査・研究および、一般事業会社の企業評価を行う。米国企業のIPOに関する研究のレビューはわが国でも蓄積がなされており、清松が詳しい。清松を中心に英国市場におけるIPO時の企業価値評価について、特に利益調整の観点から視察と研究を行う。また、わが国では1例しかないライツ・イシューのスキームについても検討を行う。 フランスには楽天や日本曹達が進出しており、フランス政府も海外企業の進出に積極的な支援を行っている。しかしながら、同国に進出した企業の評価等に関する研究は、わが国では皆無に等しいことから、平成24年度に中嶋が企業評価の現状を検討した。同国の訪問時には、その事前研究の内容の確認を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、物品費200,000円、旅費2,000,000円、人件費・謝金100,000円の使用を計画している。物品費および旅費は、4名の研究者で均等配分し、それぞれ50,000円、500,000円とする。人件費・謝金は、研究代表者の青淵と研究分担者の中嶋へ20,000円、青木と清松へ30,000円を割り当てている。 次年度の研究の核をなすのは、欧州3カ国(ドイツ、イギリス、フランス)での現地調査であり、平成25年8月後半に約10日間の予定で、本研究に携わる4名全員での渡航を予定している。渡航にかかる旅費(航空運賃,欧州内の移動を含む)として、1人あたり380,000円、現地での宿泊費に120,000円を見積もっている。 物品費は、欧州の現地調査に関する事前研究のための資料等の購入や、帰国後の論文執筆等に必要となる消耗品の購入に充当することを念頭に置いて予算計上している。 人件費・謝金の使途は、概ね次のように考えている。すなわち、研究代表者の青淵(20,000円)は、欧州3カ国のコミュニティや財務・会計に詳しい研究者をゲスト・スピーカーとして研究会へ招聘した際の謝金として、青木(30,000円)、中嶋(20,000円)、清松(30,000円)は、それぞれ欧州訪問時の通訳の謝金(青木-ドイツ、中嶋-フランス、清松-イギリス)としての支出を予定している。
|
Research Products
(4 results)