2015 Fiscal Year Annual Research Report
社会問題の戦後史におけるオーラルヒストリーの意義と可能性
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24530605
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
桜井 厚 立教大学, 社会学部, 特定課題研究員 (80153948)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 語り継ぐ / 戦後史経験 / 非体験者 / 三六災害 / 水俣業を語り継ぐ会 / コザ暴動 / オーラルヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、当該研究課題の最終年度にあたり、これまでの研究調査をまとめるにあたって追加的調査や資料収集にあたるとともに、オーラルヒストリーの語り継ぐ機能に注目して理論的な検討を行った。 追加調査としては、水俣病を語り継ぐ会の聞き取りを継続するとともに、公害や災害を伝える機関のひとつ「四日市公害と環境の未来館」などを訪ねた。さらに戦地からの引き揚げ者の記録を保存している「舞鶴引揚記念館」を訪問して記録の保存について、また沖縄市ではコザ暴動の記憶の掘り起こしをしている活動の聞き取りを行った。 研究協力者の岸衞は、一貫して長野県の駒ヶ根市の三六災害被害地の元住民の記憶を聞き取るとともにその語り継ぐ保存活動を記録してきたが、それらを報告書『災害の記憶を「語り継ぐ」--伊那谷三六災害の経験を聞く』(2016年1月)にまとめ、関係者に配布した。 また代表者の桜井厚は、これまでの調査研究を継続し、まとめの作業を行いつつ、さまざまな歴史的な出来事を人びとがどのように語り継ごうとしているのかを口頭報告、その一部を論文にまとめた。第13回日本オーラルヒストリー学会大会で「戦後史の経験を語り継ぐ――ライフストーリーから見えてくること」(2015年9月12日、大東文化大学)で口頭報告、戦争体験を語り継ぐ活動をもとに「語り継ぐ物語の社会的文脈」(『歴史と向きあう社会学』2015年)を著し、語り継ぐ様式や非体験者の語り継ぐ特質を検討した。 研究期間全体をとおして、主に公害や災害、および戦争遺産に関わる歴史的な出来事の継承について調べてきたが、今後、語りをとおして継承する活動の特質を明確にし、オーラルヒストリーの意義を確証するまとめを用意したい。
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Research Products
(10 results)