2014 Fiscal Year Research-status Report
日本における家の歴史的展開と現状に関する実証的研究
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24530624
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
平井 晶子 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (30464259)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 勝 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (20165343)
山根 真理 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (20242894)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 家 / 家族 / 世代 / 子育て支援 / 親族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、①近世農村における家の変動仮説を新たな資料を用いて検証すること、②歴史的家の展開を踏まえ、現代の都市居住者の親族間サポートの実態と継承に関する意識との関係について家の現代的特質を明らかにすること、③近世の家研究を軸に家の現代的特性を考察し現代家族論の新しい地平を切り開くこと、以上3つの目的を持つ。 当該年度では、①については、山形県の戸口資料を用いた歴史人口学的分析、とりわけに結婚パターンの解明を、②については、名古屋地域で現地調査(調査票調査)の分析ならびに補足調査(インタビュー調査)の実施を、中心的課題とした。 本年度の研究は、ほぼ予定通りに進み、下記のような成果を上げることができた。 ①家の歴史的展開について:結婚パターンの歴史人口学的分析を行い、結婚パターンが19世紀中葉以降均質化すること、とりわけ離婚可能期間が限定され、近代に生じた離婚率激減の端緒が近世末に始まっていたことが明らかになった。これにより、従来の仮説(東北農村では19世紀中葉に家の確立はライフコースの均質化を伴う変化であった)を補強することができた。これは「東北農村における結婚パターンの変容:一八・一九世紀の歴史人口学的分析」として論文にまとめ、出版することができた(業績の図書参照)。 ②家の現代的特質について:調査票調査の分析を進めるとともに、調査票調査に協力いただいた方の中から、インタビューが可能である人に連絡をとり、10名強の方にインタビューを実施することができた。これでほぼ必要な資料を収集し終えたことになる。加えて、昨年度実施した調査票調査の資料を「育児支援ネットワーク」を中心にまとめ、家族関係学セミナー(家政学会家族関係部会)で報告した(業績の学会報告参照)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、家の歴史的展開に関する実証部分と、現状に関する実証部分から構成され、最終的に両者を結合させ、長期的観点から日本の家族変動論を再考することを目的としている。 平成26年度の歴史的分析では、村山地域(山形県)の歴史人口学なライフコース分析を進め、研究成果を報告することを課題に挙げていた。結婚パターンを中心に歴史人口学的分析が予定通り進み、研究会で報告するとともに、論文にまとめる(成果の図書参照)など、予定以上の成果を上げることができた。 平成26年度の現状分析では、名古屋地域で実施した調査票調査の分析ならびに補足調査を実施し、データ収集をほぼ完了させることを中心的課題としていた。実際、補足調査を12月から3月にかけて集中的に行い、考察への準備が整ったと評価している。また現状分析も進めており、学会報告(成果の学会報告参照)へとまとめることができた。 これまでの3年間の達成度を総合的に判断し、歴史分析については世帯・ライフコース双方の分析が順調に進み、歴史的変動論の仮説検証の目処が付いた、と判断している。現状分析については、質的・量的データ収集をほぼ完了し、分析も順調に進んでおり、考察を待つ段階にきていると判断している。以上の点から、本研究の最終課題である家論的視点からの家族変動論の構築へむけた準備が順調に進んでいると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は最終年度であり、最終課題(家的視点・長期的枠組からの現代家族論の再考)の達成をめざす。これら学術的な貢献をめざすとともに、現代家族(とくに子育て)への支援のあり方についても、本研究の視点からの提言をめざす。 本研究の研究課題(①近世農村における家の変動仮説の検証、②現代の都市居住者の親族間サポートの実態と継承に関する意識の現代的特質の解明、③近世の家研究を軸に家の現代的特性を考察し現代家族論の新しい地平を切り開くこと)についての、27年度の具体的な方策は以下の通りである。 家の歴史的展開については、研究会、学会(比較家族史学会:平井)で報告するとともに、論文(論文集への寄稿予定:平井)にまとめる。家の現状分析については、昨年度、一昨年度に収集した質的・量的調査資料をもとに、本格的な分析、考察を進め、学会などで報告する(家族社会学会で3本の報告を予定:平井、山根、李、日本社会学会での報告:平井)。 また、年度末には、公開セミナーを開き、調査に協力いただいた行政の方、市民の方々と成果を共有するとともに、専門家からの評価を仰ぐ計画である。最終的には、公開セミナーの成果も踏まえ、4年間の研究成果を最終報告書にまとめる。
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Causes of Carryover |
次年度の予算を一部繰り上げ申請し、本年度の補足調査のための旅費を若干多めに確保しておいた。補足調査は対象者にインタビューを行うものであり、あらかじめ日程や人数を確定させることが難しかったためである。したがってほぼ予定どおり7万円強の次年度への繰越となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
もともと次年度の予算であっったものであり、計画通り、必要な補足調査、研究報告への旅費に使用する計画である。
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