2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530626
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
栗岡 幹英 奈良女子大学, 研究院人文科学系, 教授 (20145155)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 医療安全 / インタビュー調査 / Web調査 |
Research Abstract |
今年度は計画初年度であり、データ収集に重点をおく研究計画を立てた。すなわち、各種団体・運動体の機関誌や会報などを収集するほか、インターネット上に開陳される関係者の証言をできる限り網羅的に集め、保存することを企図していた。また、しかるべき当事者にインタビューする計画であった。この当初計画における3つの課題について、それぞれ計画の50%、50%、70%を達成したと評価できる。全体として当初計画を達成できていないのは、次項に記載するように、予期せぬ多忙化が生じたためである。 まず、各種団体・運動体の機関誌であるが、「医療過誤原告の会」「陣痛促進剤による被害を考える会」などの会報を収集した。既に30年以上被害報告と救済運動が続けられている陣痛促進剤や、また最近被害者運動が発足した子宮頸癌、さらに判決の出たイレッサ薬害事件などについて、資料を収集した。次に、インターネット上では2013年3月から4月にイレッサ薬害裁判での原告側敗訴の判決が、5月には陣痛促進剤や子宮頸癌ワクチンによる被害状況が公式に報道されたが、これらの収拾を図った。さらに、福島県に医療事故被害者遺族を訪ね、聞き取りを行うとともに、同遺族の保存する資料を借り入れた。この遺族は自らの事件に関する資料を多量に保存しており、今回借り出したものはそのごく1部であるので、引き続き他の資料を借りるための調査旅行を企画したい。 この研究の目的は、医療安全という観点からみたわが国の医療の現状を評価することにある。この問題関心にそって比較対象となる欧米の状況を確認する必要があるが、その観点や方法についてはまだ確たる見通しを得ていない。2013年度以降の課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記のように、課題の一部については計画通り達成できていない。すなわち、データ収集が十分できていない。また、こうしたデータを分析するための理論的枠組みの構築についても、予定したようには進展していない。 この理由として、学内外で大学・学部の管理運営関連業務や大学間共同事業への従事、新たに理事に選任されたために生じた学会業務への従事など、予期せぬ多忙化に直面することになり、研究時間が大幅に損なわれていることがある。当初計画した20%のエフォート率が非現実的になっている。この点について、資料収集や整理で大学院学生によるアルバイトを活用するなど、研究計画の必要な手直しを行うつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
予想外に多忙になり、研究に充てられる時間が減少しているので、課題を絞り、効率的に進めたい。 1.引き続きデータ収集を行うが、そのさい、アルバイトを活用する。 2.医療事故被害者遺族をインタビューの対象とする調査旅行を2回、近畿圏での調査を2回行う。 3.日本における医療安全問題の現状に関して社会学の立場から考えるための課題と方法に関する論文を、年度末に投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.文献図書・資料収集10万円 2.旅費 20万円・謝礼(専門的知識の提供)12万円 3.消耗品費・その他雑費等(機材補充・記録媒体・文具等)15万円 4.アルバイト(データの収集と整理)20万円 なお、昨年度は多忙なため調査を1度しか実施できず、またアルバイトの要員をみつけられなかったため、人件費も予定通りには消化できなかった。今年度については、早めに調査を実施するとともに、博士研究員に継続的なアルバイトをお願いできることになっている。昨年度分の残額については、調査の期間延長とアルバイトの時間増に当てる予定である。
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